人気アーチストMr.Childrenのためのプロモーションやツアー用ビデオを次々に手がけ、さまざまなアーティストとコラボレーション作品を制作するなど、現在、多方面から最も注目を浴びるアニメーション作家のひとり、村田朋泰。
村田朋泰は1974年、東京の下町に生まれました。2002年、東京芸術大学美術学部デザイン科に在学中に制作したパペット・アニメーション(人形を使用して1コマ1コマ撮影されたアニメーション)の短編「睡蓮の人」が、同大学のデザイン賞受賞をはじめ、第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の優勝賞、第24回ぴあフィルムフェスティバルの審査委員特別賞他を受賞。同大学院の終了制作「朱の路」が大学買い上げ賞、第9回広島国際アニメーションフェスティバル優秀賞を得るなど、大きな賞を立て続けに受賞し、一気にその存在が認知されるところとなりました。
当館はその特異な地点から出発した美術作家・村田に注目し、2003年、本展のプレイヴェントととも位置づけられる美術講座「アニメーションの世界1」を開催いたしました。パペット・アニメーションの村田朋泰とCGアニメーション作品の真島理一郎というユニークな組み合わせによる上映及び対談は、朝早くから整理券を受け取ろうと並ぶ熱心なファン、さらに子どもや年配の方まで、150人余りの人が集まりました。創作の秘密やアニメーション作家として活動していく方法など、作家同士の、あるいは、聴衆との、熱心なやりとりが終演まで続き、村田、真島人気とともに、アニメーション人気を実感させる講座となりました。
しかし、村田朋泰の創作意欲はアニメーションの枠にとどまりませんでした。「自分ひとりでも制作できると思ったからアニメーションで作品をつくっただけ」という村田は、最近では、アニメーション以外の作品の制作にも積極的です。パステルで描いた絵本、平面作品や半立体作品、そしてオブジェ、これらは画廊等の空間で発表されています。
また、本展が決定後は、さらに創作意欲に拍車がかかり、本格的な漫画作品に取り組みはじめ、とうとう2005年5月に創刊された『少年文芸』(春風社)で漫画家としてデビュー、好評につき連載を続けています。
本展は、こうしたはばひろい活動を広げている村田朋泰の、東京の美術館での本格的な個展です。今回、彼が新たなる挑戦として選んだのは、300平方メートルにおよぶ空間での本格的なインスタレー Vョン映像です。最初にストーリがあるのではなく、凹凸のある展示空間にあわせ映像作品をつくりこんでいくという作業を1年かけておこないます。いわば本展でしか見ることのできない貴重な映像作品であり、映像インスタレーション作家としてのデビュー作品です。
もちろんアニメーション作家としての村田朋泰もきっちりご紹介したいと思います。
今までつくってきた映像作品い加え、本展で、待望の「藍の路」を初公開いたします。これは、村田のライフワークとする「朱の路」「白の路」に続く5部作「路」シリーズの第3弾です。「藍の路」以外の新作映像も多数公開、撮影に使用したセットや人形、さらには村田朋泰のアトリエも出現し、美術館全館が村田朋泰の世界となります。