1966年から開始された調査は、ルクソール西岸の「マルカタ南・魚の丘遺跡」「クルナ村貴族墓」「王家の谷・西谷遺跡」、カイロ南郊の「アブ・シール南遺跡」「ダハシュール北遺跡」、ギザのピラミッド地区において数多くの成果を生み出してきました。本展覧会ではこれらの遺跡で早稲田隊が40年にわたり発掘してきた数多くの遺物の中から、特に価値のあるものを展示します。
エジプトにおける学術的発掘調査は、19世紀初頭以来、フランス・イギリス等のヨーロッパの国々により開始されましたが、多くの出土品がエジプトからヨーロッパへ運び出されました。外国の調査隊はその見返りとして発掘品の分配を求めました。しかし、早稲田大学古代エジプト調査隊は、旧来の伝統的方法と決別し、発掘品を国外に持ち出すことなく、そのすべてをエジプト国内にとどめ、保存・研究を行う方途を確立させました。今回開催の「吉村作治の早大エジプト発掘40年展」は、早稲田隊による発掘品をエジプト政府の特別の協力により借り受け、日本で初めて公開するものです。
数多くの魅力ある展示品の中でも必見は、昨年1月5日に発見された青いミイラマスクと彩色箱型木棺でしょう。早稲田隊がダハシュール北遺跡で発見したものです。中王国時代、いまから3800年前に活躍した行政官セヌウのミイラは、未盗掘の完全な形で発掘された事例としては最古級であり、発見後一躍世界的に有名となりました。また、ツタンカーメン王の銘と王妃アンケセナーメンの銘の入ったふたつの指輪のセットは世界唯一の貴重な遺物です。その他、ギザのピラミッドで知られるクフ王の銘の入った遺物は全世界に三つしかありませんが、早稲田隊はそのうち二つを発掘。スフィンクス像とセクメト女神像です。早稲田隊の長年にわたる不断の努力と、エジプトから得た信頼によって切り拓かれた扉から、エジプト5000年の歴史が甦ります。