照屋勇賢展／ストレート・フレーバー

　たとえば、代表作のひとつ≪結い、You-I≫は、出身地である沖縄の伝統的な染めの技法、紅型（びんがた）を利用して作られた着物の作品です。模様に菊の花のほか、パラシュートで降下する兵士や戦闘機、それにジュゴンといったものが表されています。そこでは鮮やかな色彩の模様によって、沖縄における米軍基地の存在が生み出す緊張状態が示されています。また、それにより、民間の開発から免れ、皮肉にも自然が残されているという逆説的な事態など、沖縄をめぐる複雑な状況までもが浮かび上がっているようです。 　ほかの作品≪Rain Forest≫では、材料であるトイレットペーパーの芯を切り抜き、折り曲げることで枝を加え、樹に見立てます。それは、捨てられていくものに宿る記憶をたどっていく行為とも解釈できます。 　このような鋭い洞察と繊細な造形によって生み出される作品は国内外で高く評価されています。本展では彼の代表作によってその活動を紹介します。