「川柳」は「俳句」とともに、わが国独特の短詩型の文芸で、江戸時代から現在まで多くの人びとに親しまれています。ともに五・七・五の17音で成り立ちますが、俳句が主として“自然”を詠んでいるのに対して、川柳は“人事”が主で、季語や切れ字(句の切れ目に使う「や・かな・けり」など)にとらわれることなく、人情の機微や社会生活の矛盾などをユーモアや風刺を込めて口語調で詠んでいるのが特徴です。
今回は、江戸時代に刊行された、古川柳のバイブルといわれる『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』を中心として、江戸名所・旅・生業(諸職)・吉原・歌舞伎・信仰(俗信)・遊戯などをキーワードに、江戸時代の人びとの暮らしの哀歓を軽妙に詠んださまざまな川柳を約200点選び出しました。そして、それぞれの川柳の句意と直接・間接的に関係のある事象について、歌麿・写楽・北斎・広重ら著名絵師が描いた浮世絵や版本を、会期の前後期あわせて約100点展示します。
また、吉原遊郭で用いられていたきせるやたばこ盆、寺子屋で使用されていた机や本箱といった民具、近世遺跡から発掘された「焼塩壺」などの考古遺物も展示しながら、江戸っ子たちの暮らしぶりを多角的に紹介します。