ほうき、はしご、ふたりあやとり・・・幼いころ、そのような「あやとり」をした覚えが誰にでもあるのではないでしょうか。しかし、あやとりは一体どこからやってきて誰がつくりだしたのでしょう。
日本独自の遊びだと思われているあやとりは、実は、世界中に、とくにアフリカ、オセアニア、極北圏、北南米大陸の文字を持たない社会で親しまれていました。その調査研究は西欧で19世紀末から始まり、現在では国際あやとり協会(ISFA)が中心となり、これまでに三千種以上のあやとりが採集されてきました。それらには、星や月などの天文、竜巻などの自然現象や風景、身近な生き物たち、家や道具などの暮らしのかたちから神話や呪術的なものまで、遊びという枠を超え、コミュニケーションツールとして世界各地に多様な造形が存在しています。
本展では、地域社会で受け継がれる知恵や知識など多彩な要素が織り込まれたあやとりの世界を紹介し、一本の紐から驚くほど豊かなイメージが繰り広げられる宇宙をひも解きます。
会場では、現地の人々があやとりをする臨場感あふれる様子と、地域で伝えられる様々なあやとりのパターンを世界の地域ごとにご紹介します。それぞれの特徴や生活文化との関わりついて、国際あやとり協会メンバーが解説を加えてナビゲーションします。また極北圏で採集されたあやとり唄他、映像資料、さらに学術的にも貴重なあやとりの文献類もご覧いただきます。
急速な近代化によってどの地域でもあやとりは消えつつあると言われています。今回ご紹介するあやとりの資料は、そのような伝承文化を残していく上でも貴重なものです。ご来場の皆様には、造形の面白さとともに、あやとりをとおして人々のくらしや世界観を読み取っていただければ幸いです