人目に触れることなく描きためられた作品群は、家主であり、自身もシカゴにおけるニュー バウハウスの中心的存在の一人であった芸術家ネイサン ラーナーに託され、その慧眼により、没後の損失を免れることになります。専門家による調査研究の機会を得て、現在、ダーガーの作品は、アウトサイダー アートの専門館に収蔵、世界の主要な美術館で展覧会が巡回されるなど、近年ますます関心の高まるところとなっています。本展は、ラーナー コレクションから、大作「The Battle of Calverhine」や自著による物語を描いた絵画15点(24イメージ 注1)、および想像上の王国々旗や架空の生き物を描いた小品約30点で構成、その多くが日本では未発表の作品となります。さらに、生前のダーガーの暮らしぶりを伝える部屋を写真で紹介、また、生前には大家として精神的に支え、ダーガー没後には、その才能を世に知らしめることに尽力したネイサン ラーナーの制作の一端を交え、孤高の表現者ダーガーの生きた軌跡に迫ります。ダーガーの作品は、戦争、平和、差別や命の尊さといった、まさに日本の現代社会が抱えるさまざまな問題を内包しています。本展では、その制作を紹介することで、生きることの意味や芸術の役割について、改めて考える機会としたいと考えます。