安藤忠雄設計の新館「地中の宝石箱」では、新旧二人のアーティスト、モネと須田それぞれの『睡蓮』を中心に構成いたします。睡蓮池に面する階段を地中に降りていくとそこが新館展示室の入り口で、中では『睡蓮』作品が来館者を迎えます。他には、ルノワール(1841-1919)やブラマンク(1876-1958)、ビュッフェ(1928-1999)、アンディ・ウォーホル(1928-1987)などによる花を展示します。これらは装飾的な花、自画像としての花など同じ花をテーマにしながらも様々な意図が投影された作品です。特に、ポップアートの雄、ウォーホルの作品は、複製時代の芸術表現として象徴的であり、同じ花をテーマにしながら印象派モネの『睡蓮』とはまったく違う印象を受けます。
大正から昭和初期に建てられた山荘である本館では、尾形乾山(1663-1743)、藤岡鐵斎(1837-1924)の日本画や河井寛次郎(1890-1966)の器や日本古陶磁、須田の木彫など、象徴的あるいは装飾的に表現され、生活空間に潤いを与える花の表現をご紹介します。
また当館ゆかりの『蘭花譜』も展示いたします。『蘭花譜』は大山崎山荘を建てた加賀正太郎が制作した蘭の木版画です。加賀が情熱を注いだ蘭栽培の集大成として作られたものでその精緻な描写は学術的にも、美術品としても高い評価をえており、特に蘭愛好家の間では加賀正太郎の名前とともに知られ、人気の高い作品です。
本展では過去の作家たちの作品だけでなく現在活躍中の2人、須田悦弘、澤登恭子の作品をご紹介します。
須田の作品は本物と見間違えるほど精巧につくられた木彫の植物。睡蓮やバラ、チューリップなど関西初公開作品を含む数点を展示いたします。今回展示する須田の『睡蓮』は当館の新館展示スペースにあわせて作られた作品で5年ぶりの公開となります。展示場所にもこだわりを持つ須田ですが、当館と須田作品の魅力を最も効果的に伝えられる場所を展示場所に選び、刹那的な美しさを表現します。
1973年生まれの澤登恭子は若手ながら世界を舞台に発表を続けているアーティストです。本展では、澤登が繰り返し取り上げているテーマである“女性の神秘や力強さ”を表現した『献花-花を産む-』など2点のビデオ作品を展示いたします。
これらさまざまな形で表現された花の作品たちと夏の山荘をあわせて花の世界をお楽しみいただきます。