成田は、1965(昭和40)年からテレビ番組『ウルトラQ』の特撮美術に加わり、そこで初めて怪獣デザインを手掛けます。「怪獣とは一体何なのか-」。その答えを求めて、海外のモンスターから日本の妖怪に至るまでを研究し、日本独自の「怪獣」を創出しました。続く『ウルトラマン』『ウルトラセブン』でも個性的で美しい怪獣を生み出し、後の怪獣デザインにおいて大きな影響を与えています。
<独創的な怪獣デザインは、気鋭の彫刻家から生み出された>
1929(昭和4)年、神戸で生まれた成田亨は幼い頃より絵画に興味を示し、将来画家になることを志して武蔵野美術学校へ入学します。在学中に彫刻への関心を次第に深め、卒業後は彫刻作品を新制作展に継続して出品します(1962年には新作家賞を受賞)。1954(昭和29)年同校の研究科に進学した成田は、東宝映画で撮影中であった『ゴジラ』でのアルバイトをきっかけにして、撮影所で造形や美術の仕事に携わるようになります。
生業のため関わった怪獣の仕事が注目されるあまり、本来成田が目指した芸術活動については見落とされがちですが、そこには豊かな想像力と怪獣創出を支えた確かな技量がうかがえます。
<創作活動としての怪獣、その個性を探る>
本展では、成田亨をはじめとして、成田亨が描いた怪獣を造形化した高山良策(たかやまりょうさく 1917-82)、さらに成田の後を継いで『ウルトラセブン』の怪獣デザインを手掛け第二次怪獣ブームを支えた池谷仙克(いけやのりよし 1940-)、今日の怪獣造形の第一人者である原口智生(はらぐちともお 1960-)の作品を展示します。怪獣といえども、作者によって表現や与える印象が大きく異なる事がわかります。
この展覧会では、彼らの怪獣を主題としない絵画や彫刻作品も併せて展示します。分かち難く結びついたそれぞれの作品を同時に見ることで、怪獣デザインや造形が特殊なものではなく、彼らの創作活動の一環であることがおわかり頂けると思います。