池田理代子さんがこの本を描いたのは20代半ばでした。高校生の時読んだシュテファン・ツヴァイクの『マリー・アントワネット』に感銘を受け、いつかこれをもとに作品を書くと誓ったのです。『ベルサイユのばら』では実在の人物であるマリー・アントワネットなどの他に、池田さんが生み出したオスカルという主人公が登場します。オスカルは女性でありながら、父親から軍人として育てられ、貴族として軍隊を統率する立場にありましたが、いつしか民衆の悲惨な生活状況を知り、革命時には民衆側に立ちバスティーユに進撃、命を落とします。当時、このような歴史ものは絶対にヒットしないといわれていましたが、『ベルばら』は少女漫画の域を遙かに超えた作品となりました。
本展では、池田理代子さんの貴重な原画を中心に『ベルばら』の世界をご紹介いたします。『ベルばら』がこの世に登場して35年が経過しましたが、300点以上もの原画がまとまって展示されるのは、本展が初めてのこと。20代半ばで渾身の力で描いた原画は、生き生きとしたペン跡が見られます。原画の他にも、オスカルが初恋の人フェルゼンとの舞踏会で生涯一度だけ装ったドレスを、原画のデザインそのまま再現展示するほか、劇画ムービーの上映、池田理代子プロダクションが所蔵する、撮影用に特別に製作された人形(オスカル、フェルゼン、アンドレ)などの展示、さらにフランスの宮廷文化を知る上で貴重な18世紀ロココスタイル衣裳の展示などもまじえて、不朽の名作『ベルばら』の世界を多角的にご紹介いたします。