川端康成と東山魁夷　響きあう美の世界

　東山魁夷（1908～1999）は1955（昭和30）年、新潮社の表紙絵制作をきっかけに川端康成（1899～1972）との知遇を得ます。文豪と画家、九歳の年齢の差をこえて、二人の心は美の探究を接点に深く通じ合いました。川端の助言により魁夷は連作＜京洛四季＞を描き、川端は自らの小説の挿絵や装丁を魁夷に依頼するなど、二人の交流は相互の創作活動にも影響を与えるようになります。近年、幸いにも100通を越える往復書簡が発見され、17年間にわたって折々に交わされた、心こまやかな手紙のやりとりが明らかになりました。初めて川端邸を訪れた魁夷をもてなしたという川端所蔵の浦上玉堂＜凍雲篩雪図＞や、川端の文化勲章受賞祝いに魁夷が贈った＜冬の野に＞など、二人の親交を物語る美術品も現存します。 　本展では、書簡を読み解きながら、関連する魁夷の作品や川端ゆかりの愛贓品を展示し、二人の偉大な芸術家の交流を偲びます。二人の眼差しを受けた書簡と作品の数々を通して、その美しい心に触れていただければ幸いです。