平野憲の世界

　平野美術館初代館長である平野憲（1917-1995）は、平野素芸（1886-1969）の子息として浜松市に生まれました。浜松第一中学校（現：静岡県立浜松北高等学校）を卒業後、家業の林業を継承。昭和23年、株式会社丸八製材所を設立しました。事業の傍ら父とともに美術品の収集に努め、仏教美術や近代日本画を中心にコレクションしていきます。第一線を退いた後は自らも独学で書画を嗜みました。 　父・素芸は文人画家として名声を博しましたが、憲はそれを継承することなく独自の絵画世界を模索しました。画風は多岐に渡り、円山四条派風の写実的な花鳥画かた当時の風俗を評した風刺画、カシニョールなど現代フランス絵画に触発された作品など様々です。特に「財力権力かさにかけ」昭和56年や「大正生れ俺達の詩」昭和60年などの作品には、当時の世評を風刺したユーモアが遺憾なく発揮されています。それらは、諸派を学んだ後にたどりついた憲特有の境地を物語っています。 　ぜひこの機会に、浜松の文化の発展と独自の絵画世界の構築に生涯を捧げた平野憲の世界をご堪能いただければ幸いです。