世界でただ一人の月光写真家石川賢治。“満月の光だけの撮影”といった例は長い写真の歴史上初めてのことで、他には類がないこれらの作品は1990年『月光浴』と題して発表され、強烈なセンセーションを巻き起こす。以後、新作を発表するたびに様々なマスコミに取り上げられ、出版された写真集は8冊を数える。また小学校の美術の教科書にも作品が採用され、2003年には福岡県より「福岡県文化賞特別賞」を受賞するなど、社会的にもその価値が高く評価されている。神の山チョモランマ、プリミティブなハワイの姿、ケニヤのサバンナに生きる野生動物の夜の姿、満月に照らされるタヒチの水平線、太古の姿を残すオーストラリアの大地、そして月下に咲く花々…そのフィールドは世界規模にまで拡がり、満月に照らし出された神々しい地球の姿を紹介しつづけている。
本写真展はこれまで石川氏が20年間撮り続けた「海の底から山の上まで」の総集編に加えて、オーストラリア、京都のシリーズを初公開にて紹介する。京都シリーズは、石川が月光写真を創作しながら東洋と日本の自然を見直したいと思っていた時に、銀閣寺の月にまつわる庭との出会いがきっかけとなり、金閣寺、清水寺、龍安寺の石庭など、満月の夜に何度も足を運び取り組んだもので、将軍が眺めたであろう月夜の庭を、時を越えて目にすることができる。
満月の光だけで撮影された月光写真は文明に邪魔されない太古から続く地球のむき出しの美しさを写しだす。環境破壊が叫ばれる今、この星の美しさを見て感じてほしい。会期中は満月の暦に併せ夜間開館延長し、ミニコンサートもお楽しみいただく予定。山の上から海の底までを撮影し続けた月光浴の旅の記録ともいえる作品群を通し、夜の神秘を写し出す満月の旅をぜひ一人でも多くの方にお楽しみいただきたい。