「美少年」という言葉の響きに、人々は誰を、そして何を思い浮かべるでしょうか?「美少年」は古今東西の歴史や神話・芸術の世界において神秘的かつ神格的な存在として繰り返し登場します。単に外見が美しい少年ということではなく、人類は「美少年」というその存在自体に、特別な意味を付加してきたと言えます。
日本においては特に近代以降、「少年」という存在は、時代の風潮を示すシンボル的な存在であると考えられます。明治維新の頃から、国策( 富国強兵/ 殖産興業) の将来を担う存在として、社会や国家の下に「理想的な少年」像が作り上げられました。「立身出世」「滅私奉公」など近代国家形成のプロセスに理想の少年像が組み込まれましたが、これが昭和戦前の「軍国少年」へとつながっていることは、周知の通りです。
高畠華宵は、近代日本で初めて「美少年」をヴィジュアル化した画家と言えるかも知れません。華宵の美少年は、同時代の伊藤彦造らにも影響を与え、大正から昭和戦前にかけては、華宵的な「紅顔の美少年」が少年雑誌を飾りました。そして戦後になると、華宵たちの影響を受けた漫画家が、特に少女漫画において、「美少年」を題材に作品を描きました。
本展覧会では、高畠華宵や同時代の画家、そして戦後の少女マンガ家が描いた「美少年」を紹介します。現代社会においては、「美少年」という言葉はあまり使われなくなりました。変わりに「草食系男子」「イケメン」などという言葉が流行していますが、これらは特に「少年」だけをさす言葉ではありません。「美少年」はいなくなってしまったのでしょうか?「美少年」が現れる社会とは、どのような社会なのでしょうか? そんなことを考えてみたい展覧会です。