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    レポート
    ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画
    千葉市美術館 | 千葉県
    雨やどりから始まった、日本美術への想い
    世界の企業人に多大な影響を与えてきた「マネジメントの父」、ピーター・F・ドラッカー(1909~2005)が熱心に日本古美術を蒐集していた事は、あまり知られていないかもしれません。室町水墨画や文人画など111点のコレクションを紹介する展覧会が、千葉市美術館からはじまりました。
    知有《翡翠図》 / 伝雲渓永怡《叭々鳥図》 / 雲渓永怡《平沙落雁図》
    会場入口
    清原雪信《芙蓉図》 / 式部輝忠《渓流飛鴨図(扇面)》
    雪村周継《月夜独釣図》 / 伝文成《十牛図》
    狩野秀頼《山水図(団扇形)》 / 狩野之信《秋冬山水図》 / 前嶋宗祐《山水図》
    伊藤若冲《梅月鶴亀図》 / 狩野探幽《波に兎》
    海北友松《翎毛禽獣図》
    与謝蕪村《陶淵明聴松風図》 / 長沢芦雪《娘道成寺図》
    岡田米山人《山水図》 / 木村蒹葭堂《夏景山水図》 / 鶴亭 佚山賛《富士山図》
    オーストリア生まれのドラッカーが日本美術と出会ったのは、ロンドンで銀行員として働いていた1934年の事。突然の雨嵐に遭ったドラッカーは、雨やどりに入った建物で日本美術の展覧会を見て「恋に落ちてしまった」といいます(ちなみに、本展ではその時にドラッカーが見た展覧会を調べましたが、残念ながら断定には至りませんでした)。

    1959年に初来日を果たすと、早速2点の古美術を購入。その後も訪日するたびに、講演などの合間を縫って作品を収集し続けました。


    最初に展示されている2点が、初来日で購入した作品。室町時代の扇面画と、江戸時代の濃彩の掛軸です

    2度目の来日で、古美術商に「室町水墨の山水画の良いものを見たい」と切り出したドラッカー。普通は浮世絵などを求める西洋人が多い中、その渋すぎる趣味に店の主人も驚いたそうです。

    幸い、ドラッカーがコレクションに目覚めた60年代は、まだ室町水墨が手に入りやすかった時代。現在のコレクションに残る室町水墨の優品は、この時代に集められたものも少なくありません。

    ドラッカーにとって日本美術は「珍しい異文化」ではなく、生活に欠かせないものでした。求めた作品は自宅に飾り、多忙な毎日の中から「正気を取り戻し、世界への視野をただすために日本画を見る」と語っていました。


    1章「1960年代、初期の収集」、2章「室町水墨画」

    山水画について語る事が多かったドラッカーですが、そのコレクションには花や鳥、動物などが描かれた作品も数多くあります。

    海北友松《翎毛禽獣図》は、松に小禽、兎、鷹、牛、馬、猿を描いた六幅の掛物(もとは屏風でした)。凛々しく上を見る鷹、顔とポーズがユニークな猿など、手慣れた筆さばきで描いています。

    波間で遊ぶような愛らしい兎は、狩野探幽《波に兎》。本展出品作の中ではドラッカーが最後に手に入れた作品で、本展が初めての里帰りとなります。


    3章「水墨の花と鳥」

    ドラッカーが3度目の訪日で出会い、衝撃を受けたのが禅画です。禅画は江戸時代には芸術とはみなされませんでしたが、精神性も含めてドラッカーの心を捉えたようで、風外慧薫、白隠、仙厓と次々に作品を収集しました。

    コレクションの3分の1を占めているのが、江戸時代の文人画。ただ、文人画を見るには、その「画家の心」をもって見る事が求められていると感じたドラッカーは、当初は買い求めず、最初の文人画を入手したのは、コレクションをはじめてから10余年後でした。


    5章「禅画」、6章「文人画の威力」

    ドラッカーのコレクションは、これ以外ではあまり作例を見いだせない逸伝の水墨画家たちの作品もあるなど、研究の面でも貴重な存在です。まとまった形で日本で紹介されるのは、約30年ぶり。経営学の巨星が虜になった日本美術をお楽しみください。

    なお「歴代館長が選ぶ 所蔵名品展 第2部」も同時開催中。千葉市美術館が誇る浮世絵の名品などを、ドラッカー展入場の方は無料でお楽しみいただけます。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年5月20日 ]


     
    会場
    会期
    2015年5月19日(火)~6月28日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時-午後6時 (入場は午後5時30分まで)
    金曜日・土曜日は午後8時まで (入場は午後7時30分まで)
    休館日
    6月1日(月)
    住所
    千葉県千葉市中央区中央3-10-8
    電話 043-221-2311
    公式サイト http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2015/0519/0519.html
    料金
    一般 1,200円(1,000円)/大学生 700円(500円)/小・中学生、高校生無料
    ※( )内は前売券、団体20名以上の料金
    ※市内在住65歳以上の方は一般料金より2割引
    ※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
    展覧会詳細 ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画 詳細情報
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