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    レポート
    富岡鉄斎と近代の日本画
    大和文華館 | 奈良県

    奈良・学園前のアートスポット第2弾『大和文華館(やまとぶんかかん)』を訪ねました。今回の展覧会は「富岡鉄斎と近代の日本画」です。

    駅から徒歩10分の散歩、新緑の外門が迎えてくれます。両側に季節の花咲くゆるやかなスロープを進むと見えてきました!大きめの「なまこ壁」が整然と並ぶ建物は吉田五十八設計です。2010年にリニューアルされましたが、繊細な数寄屋建築と堂々としたエントランスロビー、そして展示室内の竹庭など美術品を鑑賞するためのとても美しい空間です。



    大和文華館外門



    見えてきました、美術館は吉田五十八建築



    美しく整然とした彫の深い壁



    天井も高く威厳あるエントランス


    さて、富岡鉄斎(とみおかてっさい 1836~1924)という人はどんな人でしょう?

    恥ずかしながら私はよく知らないまま足を運んでしまったのです。京都三条の法衣商に生まれ、石門心学や漢学、国学、陽明学など多方面の学問を習熟し、“日本最後の文人”といわれるようです。

    そんな富岡鉄斎は読書や旅行を好み、漢詩を典拠とする山水画などを多く描きました。奔放な筆致と豊かな色彩による独自の画法で表現し、海外で遺作展が開かれるほど評価が高く、彼に魅了された著名人も多数にのぼるようです。 

    まず初めに迎えてくれたのは《閻魔図》。南画家・田能村直入が94歳で死去した際、“地獄の鬼に捉えられ・・”と詠み閻魔さまと、その前で画を描く直入を描きました。南画協会を設立した仲間の死を悼む作品です。



    出迎えてくれたのは閻魔さま 《閻魔図》明治40年


    展示室内は多様な水墨画が並びますが、画に書が添えられているのが特徴で、ちょっと絵日記のように思えたり・・。優れた文人ですが、見たものを率直に描いたものからは豊かな感情と温厚な人柄ではなかったかと思わせます。鍾馗さまを朱く描いたり寿老人など縁起のよい神々も登場します。



    富岡鉄斎の躍動感あふれる作品が並ぶ



    《朱描鍾馗図》と《寿老人図》


    また、今回の出展は鉄斎と親交が深い愛媛三津浜の近藤家とのかかわりによるものが数多くあります。石崎汽船ゆかりで瀬戸内海の海産物も扱っていた近藤家とは父子二代にわたる親交があり、いただいた鮮魚や海老のおいしさに感動して絵筆を走らせた画と書簡が何度も往来したようです。



    《車海老図》明治18年



    近藤家への書簡


    ダイナミックな筆遣いで奔放に描かれた漢詩や故事に基づく山水画群にも圧倒されます。 太く勢いよい筆運びと細かい描写に淡く色をのせて季節感や柔らかさの表現も感じとれるなど一場面にいろんなことを織り込んであるのです。読み解くヒントは添えられた文章で、知識がないと難解です。

    二幅対の作品は右が《寒月照梅華図》と左が《梅華満開夜図》。墨一色なのに月光と寒さが伝わる一方、梅の開花と淡い彩色が待っていた春の訪れを喜んでいるようで心が和みます。《松鶴図》には松と鶴と猿のこしかけが描かれ、いずれも長寿を願う素材ですが、この鶴は鉄斎自身といわれています。



    水墨画の数々



    (右)《寒月照梅華図》 (左)《梅華満開夜図》 明治44年



    《松鶴図》明治45年


    もっと私を和ませてくれたのは《天神土人形図》です。菅原道真をかたどる伏見人形を描いたと聞きましたが鉄斎の優しさが道真公に投影されているように思え、お気に入りの1枚となりました。



    《天神土人形図》一部 明治39年


    近代日本画界からも6点の展示があり、土田麦僊の《洗髪図》はその表装もお洒落で目をひきました。 



    《洗髪図》土田麦僊筆 昭和時代 


    大和文華館には日本、中国、朝鮮を中心とした絵画書蹟など多くの所蔵品があります。「寝覚物語絵巻」や「婦女遊楽図屏風(松浦屏風)」など国宝4件や先頃注目を浴びた雪村周継筆の「呂洞賓図」など公開が待たれます。

    周りを囲む自然苑には「鹿児島紅梅」など、様々な品種をもつ梅林や三春の滝桜の子孫の枝垂れ桜など季節ごとに楽しめる花木、そして外門の横には辰野金吾設計の奈良ホテルからの移築建物が“文華ホール”として利用されています。美術館を出る時、ドア越しに見える緑の森が“床緑”の演出で見送ってくれました。



    ミュージアムショップ



    奈良ホテルからの移築建造物「文華ホール」


    同じく奈良・学園前の「松伯美術館」と一緒にめぐる1DAYアートがお勧めです。別のレポートでご紹介しましたのでよろしければご一読ください。

    実はもう1館「中野美術館」へも立ち寄りました。「大和文華館」とは池を挟んで対岸にある小さな美術館です。折しも富岡鉄斎や富田渓仙の軸や村上華岳、佐藤忠良のブロンズ像、そして洋画では小出楢重や藤田嗣治など数点と出会えました。秀逸なコレクションでこちらも注目です。


    [ 取材・撮影・文:ひろりん / 2021年5月21日 ]


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    会場
    大和文華館
    会期
    2021年5月21日(金)〜7月4日(日)
    開催中[あと18日]
    開館時間
    午前10時~午後5時(入館は午後4時まで)
    休館日
    毎週月曜日(ただし、祝日の場合は開館し、次の平日を休館いたします)
    住所
    〒631-0034 奈良県奈良市学園南1-11-6
    電話 0742-45-0544
    公式サイト https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/
    料金
    平常展・特別企画展〉
    一般630円、高校・大学生420円、小学・中学生無料
    〈特別展〉
    一般950円、高校・大学生730円、小学・中学生無料
    ※ 20名以上の団体は相当料金の2割引・1名無料
    「障がい者手帳」をお持ちの方とご同伴者1名まで2割引
    展覧会詳細 富岡鉄斎と近代の日本画 詳細情報
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