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    レポート
    岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟
    東京都庭園美術館 | 東京都
    軽やかに翔んだ、若き才能
    1950年代に活躍したフォトコラージュ作家、岡上淑子(おかのうえとしこ:1928-)さん。活動はわずか7年間と限られていますが、LIFEやVOGUEなどを用いた印象的な作品は、近年になって再び注目を集めています。国内外の作品を紹介する大規模展が、東京都庭園美術館で開催中です。
    第2会場 右は《寝室》1955 栃木県立美術館
    《招待》1955 高知県立美術館
    (左から)《貴婦人》1954 ヒューストン美術館 / 《イヴ》1955 栃木県立美術館
    (左から)《翔ぶ》(旧題:鳥)1955 ヒューストン美術館 / 《真昼の歌》1954
    (左から)《落下》1956 ヒューストン美術館 / 《孤独の讃歌》1952 東京国立近代美術館
    《ささやき》1952 高知県立美術館
    (左から)《トマト》(旧題:作品A)1951 東京都写真美術館 / 《戯れ》1952 高知県立美術館
    (左から)クリスチャン・ディオール《イヴニング・ドレス》1952年頃 / クリストバル・バレンシアガ《イヴニング・ドレス》1951年 ともに京都服飾文化研究所財団
    写真アルバムより

    結婚を機に創作から離れたため、フォトコラージュ作家としての活動は短かった岡上さん。近年、内外の展覧会に出品が相次いでおり、改めてその独創性に注目が集まっています。


    岡上さんは高知市生まれ。幼少期に東京に転居し、多感な時代は戦争の真っ只中でした。ファッションに憧れ、1950年に文化学院に入学。授業で出された「ちぎり絵」の課題から面白さに目覚め、海外のグラフ雑誌やファッション誌をハサミで切り抜いて貼り合わせる、フォトコラージュの制作を始めます。


    女学校時代の学友を通じて、日本におけるシュルレアリスム運動を先導した瀧口修造に出会うと、その才能は開花。瀧口を介して見たマックス・エルンストの作品にも感化され、複雑で奥行きがある作品を次々に生み出していきました。



    会場は2部構成で、本館が第1会場てす。アール・デコ建築の旧朝香宮邸に、厳選されたコラージュ作品と、初期の作品や、コラージュ以降の後期の作品。参考作品として、50年代のドレスも展示されています。


    新館ギャラリー1の第2会場には、コラージュ作品がずらり。3幕に分けて展示されています。ヒューストン美術館が所蔵する12点は、2002年に同館に収蔵されて以来、初の日本展示です。


    第1幕のコーナータイトルは「懺悔室の展望」。東京・山の手大空襲の後、学友の無事を案じて、自転車で渋谷に繰り出した岡上さん。17歳の岡上さんにとって、道玄坂の上から見た変わり果てた町の姿は、鮮烈な記憶として残りました。《廃墟の旋律》は、この経験を視覚化した作品です。


    第2幕は「翻弄するミューズたち」。肌も露わに、悩ましげな指先で男たちを翻弄するミューズ。逆に男性はスーツを着て、ロボットのように働く事を強いられており、対照的な姿が見られる作品が並んでいます。


    第3幕は「私達は自由よ」。岡上さんが最後の作品を発表したのは、「もはや戦後ではない」という言葉が流行した1956年。その活動期は、戦後の復興期とちょうど重なります。敗戦で価値観が逆転し、唐突に自由を与えられて戸惑う男達を尻目に、20代の女性ならではの瑞々しい感性で、軽やかに進んでいきました。


    東京の公立美術館では初めての個展で、かつ過去最大規模となる展覧会。巡回はせず、東京都庭園美術館だけでの開催です。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年1月25日 ]



    会場
    会期
    2019年1月26日(土)~4月7日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00-18:00 (入館は17:30まで)
    休館日
    第2・第4水曜日(2月13日、2月27日、3月13日、3月27日)
    住所
    東京都港区白金台5-21-9
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://www.teien-art-museum.ne.jp/
    料金
    一般 900(720)円 / 大学生(専修・各種専門学校含む)720(570)円 / 中学生・高校生・65歳以上 450(360)円

    ※ ( )内は20名以上の団体料金・前売り料金
    ※ 小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
    ※ 身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその介護者一名は無料。
    ※ 教育活動として教師が引率する都内の小中・高校生および教師は無料(事前申請が必要)。
    ※ 第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上の方は無料。
    展覧会詳細 「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」 詳細情報
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