新型コロナウイルス感染症拡大防止のため2月29日(土)から休館していた東京都写真美術館。6月2日(火)からようやく再開となりました。
2階展示室で開催されている本展は、文化誌『花椿』の編集者としてファッションやアートの世界を見つめてきた林央子氏が監修。会場にはアーティスト別に作品が並びます。
まず冒頭は、アンダース・エドストローム(1966-)から。フランスでファッションデザイナーのマルタン・マルジェラと出会い、メゾン・マルタン・マルジェラの撮影を長年手がけました。ファッション・カルチャー誌『Purple』で、多くの作品を発表しています。

アンダース・エドストローム
髙橋恭司(1960-)も『Purple』など、ファッション・カルチャー誌で活躍。まっすぐにこちらを見返す女性の写真《Tokyo Girl》は、ファッション誌『CUTiE』1992年6月号の巻頭特集です。同誌は「男の子のためにおしゃれをするのではなく、自分が楽しくなるために服を着る」ことがコンセプトでした。

髙橋恭司
会場では、時代のターニングポイントとなった雑誌を資料展示として紹介。『Purple』は1992年にパリで創刊。同人誌のような形態から大きく成長し、さまざまなクリエイターに影響を与えました。『here and there』は、展覧会監修の林央子氏が2002年に創刊しています。

「Purple」「here and there」
その『Purple』を創刊したひとりが、エレン・フライス(1968-)、本展ではスライドプロジェクターで写真を展示。あわせて同じ展示室で、エレンと長く交流がある現代美術作家の前田征紀によるインスタレーション作品も展示し、両者によるコラボレーション空間が広がります。

前田征紀
日本人の若者をモデルとして起用し、ストリートで撮影し続けたのがホンマタカシ(1962-)です。ホンマタカシが『CUTiE』や『流行通信』などで活躍した90年代は、雑誌が文化を牽引していた時代。ただ、インターネットの普及により、状況は大きく変わっていきました。

PUGMENT×ホンマタカシ
ファッション・レーベルのPUGMENT(パグメント)は、2014年に結成。主要メンバーは90年代生まれの男女と、すでにインターネットが普及し、多くの雑誌が消えた時代です。結成当時からホンマタカシとコラボレーションを展開するほか、さまざまな分野の人々と協働。現在はギャラリースペースも営んでいます。

PUGMENT
編集者と写真家が協働し、雑誌から流行がつくられていた90年代。その後、ネットの普及により雑誌主導で流行現象がつくられる時代が終わり、スマホが広まるにつれてエンドユーザー自身が情報発信するようになりました。ファッションにおける写真の役割は、時代とともに変化し続けている事が実感できる展覧会です。
元々は3月3日(火)~5月10日(日)の日程で予定されていた本展。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため休止していましたが、会期が延長されました。展覧会の入場には特に予約などは必要ありませんが、東京都写真美術館ではさまざまな対策を行っているほか、木・金曜日の夜間開館を休止しています。来館前に必ず公式サイトでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年6月3日 ]