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    レポート
    戦争/美術 1940-1950 モダニズムの連鎖と変容
    神奈川県立近代美術館 葉山 | 神奈川県
    葉山館開館10周年記念展
    日本初の公立近代美術館である神奈川県立近代美術館は、鎌倉館(1951年開館)、鎌倉別館(1984年開館)に次いで2003年に葉山館が開館。10周年を迎えた同館では、1940~1950年の日本の美術シーンを振り返る企画展が開催中です。
    丸木位里、俊《原爆の図(第一部 幽霊)》1950年
    朝井閑右衛門《丘の上》1936年(右)
    原精一が戦地で描いたスケッチ類
    丸木俊《休み場》1941年(右)
    内田巌《鷲》1941年(左)
    松本竣介《立てる像》1942年(右)
    山口蓬春《香港島最後の総攻撃図》1942年(右)
    丸木位里、俊《原爆の図(第三部 水)》1950年
    イサム・ノグチ《広島原爆慰霊碑のためのマケット》1951年(左)
    太平洋戦争が終結した1945(昭和20)年8月15日。大きな犠牲を払いながらも戦勝だけを目指して進んでいた体制は、この日を境に180度転換し、「戦前・戦時中」と「戦後」ではあらゆることが変わりました。

    この時期に創作活動をしていた人は、時代の転換にどう向き合い、自らの表現に反映させていったのか。本展は松本竣介、朝井閑右衛門、麻生三郎、鳥海青児、山口蓬春など神奈川県立近代美術館のコレクション作品を中心に紹介していく企画です。


    会場

    会場構成は、ほぼ年代順。1939年以前の序章からはじまり、1940年、1941年と、1年ごとに歴史上の出来事と、日本の美術界での出来事が紹介される中に絵画が並びます。

    戦時中、安易な国策への協力を批判した松本竣介の《立てる像》や、鮮やかな色使いが多い作者にしては珍しく煤けた戦争画の山口蓬春《香港島最後の総攻撃図》(8月25日まで展示)など、大型の作品が目にとまります。


    会場

    終戦後に米国に接収された「戦争記録画」も、前述の山口蓬春のほか、藤田嗣治の《ソロモン海域に於ける米兵の末路》と《ブキテマの夜戦》の3点が展示。

    時局のため止むを得ないとも言えますが、書籍などの関連資料には、欧米の文化を批判し、戦争を賛美するような画家の声も掲載されています。


    書籍などの関連資料も展示されています

    展覧会のメインといえるのが、丸木位里、俊夫妻による《原爆の図》。8月25日(日)までは「第一部 幽霊」と「第三部 水」、8月27日(火)からは「第二部 火」と「第四部 虹」が展示されます。

    教科書にも掲載されている、反戦を象徴するような作品。目を背けたくなる凄惨な光景が強調されがちですが、実は見事な構成にも注目して欲しい絵画です。描きこんだ部分と余白の対比が絶妙で、横方向へのリズミカルな広がりは、洗練されたグラフィックデザインのような美しさです。


    《原爆の図》

    戦争への協力を厳しく非難され、日本を出た藤田嗣治。その藤田を徹底的に追求した内田巌は、共産党に入党。戦争画も描いた山口蓬春は、明るい作品を極めて文化勲章を受章。そして、1982年まで《原爆の図》を描き続けた丸木位里・俊夫妻…。展示されている画家の、戦後の歩みはさまざまです。

    絵を観るだけで主義や主張が変わるほど単純な人は多くないと思いますが、近隣諸国の声が強くなっていることもあって、かなり考えさせられる展覧会です。まったくの偶然ですが、取材に訪れたのは8月9日。もちろんこの日は長崎原爆忌です。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年8月9日 ]

    画家たちの「戦争」

    神坂 次郎 (著), 河田 明久 (著), 丹尾 安典 (著), 福富 太郎 (著)

    新潮社
    ¥ 1,575

     
    会場
    会期
    2013年7月6日(土)~ 10月14日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日休館 ただし7月15日(月・祝)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)、10月14日(月・祝)は開館
    住所
    神奈川県葉山町一色2208-1
    電話 046-875-2800
    公式サイト http://www.moma.pref.kanagawa.jp/
    料金
    一般 1,000(900)円/20歳未満・学生 850(750)円/65歳以上 500円/高校生 100円
    ※()内は20名様以上の団体料金
    ※中学生以下、障害者手帳をお持ちの方は無料です。
    ※その他の割引につきましてはお問合わせ下さい。
    ※「ファミリー・コミュニケーションの日」
    ※毎月第1日曜日(今回は7月7日、8月4日、9月1日、10月6日)は、18歳未満のお子様連れのご家族は優待料金(65歳以上の方を除く)でご観覧いただけます。
    ※葉山館開館10周年記念無料開館日10月11日(金曜)は神奈川県立近代美術館で開催中の3つの展覧会を無料でご観覧いただけます。
    展覧会詳細 「戦争/美術 1940-1950 モダニズムの連鎖と変容」 詳細情報
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