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    レポート
    小林古径生誕130年記念 古径と土牛
    山種美術館 | 東京都
    おなじ画題を比べる楽しみも
    院展を舞台に明治末期~昭和期に活躍した日本画家・小林古径(こばやしこけい)。生誕130年にあたる本年、古径の作品と、同門の奥村土牛(おくむらとぎゅう)の作品を比較展示する企画展が山種美術館で開催中です。
    (左から)奥村土牛《浄心》昭和32年 山種美術館/小林古径《観音》昭和15年 霊友会妙一記念館/小林古径《鶴》昭和23年 山種美術館
    (左から)小林古径《蛍》明治45年 山種美術館/小林古径《大毘古命図》明治40年 横浜美術館寄託寄託
    小林古径《静物》大正11年 山種美術館
    小林古径《清姫》昭和5年(全8面のうち3面) 山種美術館
    (奥)小林古径《紫苑紅蜀葵》昭和11年 霊友会妙一記念館
    (左)奥村土牛《城》昭和30年/(右)奥村土牛《雨趣》昭和3年 いずれも山種美術館
    (左から)奥村土牛《鳴門》昭和34年/奥村土牛《醍醐》昭和47年 いずれも山種美術館
    (左から)奥村土牛《シャム猫》昭和49年/小林古径《猫》昭和21年 いずれも山種美術館
    山種美術館の2014年カレンダーは、小林古径《鶴》が表紙です

    小林古径(1883~1957)と奥村土牛(1889~1990)。6歳違いの二人は梶田半古(かじたはんこ)に学んだ同門ですが、半古が没した後、土牛は古径に直接学んだこともあり、兄弟弟子というよりは師弟のような間柄でした。


    山種美術館は両人と縁が深く、古径の作品を46点所蔵。土牛に至っては135点も所蔵しており、これは日本最多です。


    山種美術館名誉館長の山崎富治氏曰く、小林古径は「口数が少ない怖い人」だったとの事。土牛については山種美術館創設者の故・山崎種二が土牛を訪ねたところ、貧しかった土牛の家には電話が無かったため、種二の手配ですぐに電話が設置されたというエピソードも伝えられています。



    会場入口から


    展覧会は「小林古径の芸術」「古径と土牛」の二章構成です。


    まずは古径の作品から。前半は古径の若き時代の歴史人物画に始まり、現存する唯一の油彩画が必見です。


    さらに渡欧を通じて東アジアの線描の美を再認識した古径は、その成果ともいえる紀州の道成寺伝説を題材にした《清姫》を発表します。これは、古径ならではの格調の高さで評価が高い作品です。


    元は絵巻にすることを想定して描かれたものですが、詞書がなかったり、最初の1枚は着色されていなかったりと謎も多い作品。全8面が一挙に公開されるのは、3年ぶりとなります。



    小林古径《清姫》昭和5年 山種美術館


    続いて、土牛の作品も2点ご紹介します。醍醐寺のしだれ桜に想を得た《醍醐》は、山種美術館ではお馴染みの作品。実は土牛が醍醐寺に立ち寄ったのは、小林古径の薬師寺で行われた七回忌法要からの帰り道でした。


    もう1点、美しい緑色が印象的な《鳴門》。船上から見た鳴門の渦潮に感銘を受けた土牛は、海に落ちないよう妻に帯を掴んでもらいながら、何十枚も写生を繰り返したそうです。



    奥村土牛《醍醐》昭和47年/奥村土牛《鳴門》昭和34年 いずれも山種美術館


    日本美術院の留学生として渡欧しながらも、日本画の可能性を信じて歩んだ古径。古径を慕い続け、平成の世まで研鑽を続けた土牛。関係が深い二人ですが、意外にも二人を並べて紹介する企画はほぼ初めてです。


    鳥、蓮、猫、犬など、同じ画題で描かれた二人の作品を比較できるのも、本展の魅力といえるでしょう。



    同じ画題で描かれた、古径と土牛の作品


    今年の山種美術館は年末年始に展示替えとなるので、早いもので本展が2013年最後の展覧会。ミュージアムショップでは、山種コレクションの名品が並ぶ人気のカレンダーの2014年版が発売されました(本展にも展示中の小林古径《鶴》がこのカレンダーの表紙を飾っています)。


    年明けは2014年1月3日(金)から「Kawaii(かわいい)日本美術 ―若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで―」で幕開けとなります。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年10月21日 ]


    ※会期中に一部展示替えがあります(前期10/22~11/24、後期11/26~12/23)


    奥村土牛 (ちいさな美術館)

    奥村 土牛 (著)

    青幻舎
    ¥ 1,260
    会場
    会期
    2013年10月22日(火)~12月23日(月)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館16:30まで)
    ※特別展の開館時間は変更になることもあります。
    休館日
    月曜日休館 ただし11月4日(月祝)、12月23日(月祝)は開館、11月5日(火)は休館
    住所
    東京都渋谷区広尾3-12-36
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.yamatane-museum.jp/
    料金
    一般 1,200円(1,000円)/大高生 900円(800円)/中学生以下無料
    ※( )内は20名以上の団体料金および前売料金。
    ※障がい者手帳、被爆者手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。
    展覧会詳細 小林古径生誕130年記念 古径と土牛 詳細情報
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