海外で熱烈なラブコール、The Great Waveが日本に凱旋!
海外では“The Great Wave”で親しまれている北斎。
北斎の大波をモチーフにした商品が多く生産され、おしゃれなアイコンとして熱烈なラブコールを受けています。
誰が見ても「あ!北斎や!」と認識できるほどの強烈な個性を放つ北斎の晩年の作品を紹介する展覧会が、あべのハルカス美術館にやってきました。(先日、イギリスの大英博物館で開催され、今秋、大阪にも巡回してきました)
右から、北斎改為一筆《富嶽三十六景 山下白雨》(天保1-4(1830-33)頃)、北斎改為一筆《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》(天保1-4(1830-33)頃)、北斎改為一筆《富嶽三十六景 凱風快晴》(天保1-4(1830-33)頃)。
北斎といえば《富嶽三十六景》を始めとする版画が有名ですが、晩年には肉筆画も多数描いています。
当時の版画は版元に雇われて仕事をするというのが主流でしたが、肉筆画は版元を仲介しないため、比較的自由に作品を制作できました。
年齢とともに、より熟成した素晴らしい作品を描くことができるはず、と自分の限界に線引きをせず、気の向くままに自由に挑戦し続けた北斎。
大英博物館の学芸員ティモシー・クラーク曰く、北斎の意志は落款にも表れていたそうです。北斎はimmortality(不死)を表す「百」という落款を晩年の87〜89歳時に描いた作品に用いました。自分が90歳で死ぬとは考えていなかったようです。
自らの限界に挑み続けた北斎の晩年の作品を少しご紹介します。
北斎改為筆《富嶽三十六景》(天保1-4年(1830-33)頃)
富士山をいろんなアングルで描いた《富岳三十六景》は、当時中国から輸入された化学顔料であるベロ藍と伝統的な藍の両方を併用し、空の濃淡を見事に表現しています。
真ん中上部の《富嶽三十六景 隠田の水車》(天保1-4年(1830-33)頃)を見てみましょう。ゴボゴボと流れる水が水車に乗ってどんな動きを見せるのか、北斎は水の流れに執心しているようです。
画面左下には亀をお散歩させている男の子もいたりして、とても楽しい一枚になっています。
前北斎為一筆の《横大判花鳥図》(天保2-3(1831-32)頃)
北斎は色数を最低限に絞り、一本一本“線”にこだわって花を表現しています。
右から二番目の《芥子》(天保2-3(1831-32)頃)やその隣の《牡丹・蝶》(天保2-3(1831-32)頃)では、北斎の十八番である風の表現が見て取れます。花や葉っぱが左から、右から風に押されてうねっています。
右から、葛飾応為《関羽割臂図》(弘化-嘉永期(1844-54)頃)、葛飾応為《月下砧打ち美人図》(弘化-嘉永期(1844-54)頃)
実は北斎は二度結婚し、二番目の妻との間にできた娘、お栄もまた画家でした。「応為」というのは彼女の画号で、応為は北斎晩年の数十年を北斎の近くで過ごしたと言います。
現在、北斎のものとされる作品の中にも応為の筆致が見られる作品が多数存在することから、作品の落款が北斎であったとしても、応為が描いた作品もあるのでは、と言われています。
《関羽割臂図》では、中国の武将関羽が敵の毒矢に当たり、骨の一部を取り除く手術が行われている場面が描かれています。
手術を受ける当の本人は右腕を切られながらも涼しい顔をして囲碁をしていますが、立ち会う人々はその光景を見ていられないといった様子で、目を背けています。
最後に展覧会風景をご紹介します。
会場全体は和をイメージした作りになっています。
今は北斎作とされる作品も、研究が進めば応為との共同制作ということが明らかになるかもしれません。
北斎の晩年の作風と応為の作風を見比べて、これって応為との共同かも?と思って作品を見ていくと新たな発見があるかもしれません。
会場 | あべのハルカス美術館 |
開催期間 | 2017年10月6日(金)~11月19日(日) |
休館日 | 10月10日(火)・16日(月)・23日(月)・30日(月)・31日(火) |
開館時間 | 火~金 / 10:00~20:00、月土日祝 / 10:00~18:00 |
所在地 | 大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階 |
06-4399-9050 |
HP : http://hokusai2017.com/ |
料金 | 一般 1,500円、大学・高校生 1,000円、中学・小学生 500円 |
展覧会詳細へ |
「北斎-富士を超えて-」詳細情報 |
エリアレポーターのご紹介
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胤森由梨
美術が大好きなアートライターです。美術鑑賞に関わる仕事を広げていきたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です! ブログ「たねもーのアート録」http://tanemo-art.com/
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