東京都写真美術館で初めての試みとなる、建築をテーマとした企画展が開催されています。
本展示は2つの章から成り、第1章で建築が被写体となった歴史を紐解き、第2章で写真家を通して見た建築の美しさ、面白さ、時間的・空間的な制約などを共有することができます。
第1章
写真を撮るだけで8時間もかかったような初期の写真技術においては、動かない建築が被写体として好都合でもありました。
左)シャルル=イジドール・ショワズラ&スタニスラス・ラテル《旧フロールの館とチュイルリー公園》1845年 ダゲレオタイプ
世界最初の実用写真技術であるダゲレオタイプは、銀メッキされた銅版を1回1回用いたため、角度によって反射しています。
記録する役割に始まった建築写真は、時代を辿るごとに徐々に個性が滲み出す様が見て取れました。
ベルント&ヒラ・ベッヒャー《9つの戦後の家》1989年 ゼラチン・シルバープリント
第2章
11人の写真家それぞれにつき、1テーマで構成されています。
11人の中には建築写真で有名な方はもちろん、建築以外のシリーズで有名な方もいらっしゃいました。
テーマも、特定の建築(伊勢神宮、桂離宮など)、地域(軍艦島、九龍城など)、建築家(丹下健三、ガウディ、コルビュジエなど)といったようにバラエティに富んでいます。
左)奈良原一高<人間の土地>より《緑なき島ー軍艦島:アパートの階段》1954-57年 / 右)奈良原一高<人間の土地>より《緑なき島ー軍艦島:アパートの道》1954-57年 共にゼラチン・シルバープリント
今回のチラシに使用されている原直久さんの作品群は、モノクロにも関わらず、路地裏を探検しているときのような臨場感が印象的でした。
左)右)共に 原直久<イタリア山岳丘上都市>より《チステルニーノ,イタリア,1984》1984年 ゼラチン・シルバープリント
石元泰博さんの<桂>シリーズでは、建築写真では撮らないような庭の敷石と苔の質感・パターンにまで着目された作品がありました。
私たちが建築に想いを馳せるときには、庭、内装を含めた空間全体を捉えているのかもしれないと感じました。
石元泰博<桂>より《古書院御輿寄前中坪の延段・石と苔》1953年 ゼラチン・シルバープリント
同じ東京都写真美術館で開催された柴田敏雄さんの個展では、ダムや橋、道路端斜面の落石防止コンクリートといった、美術的用途が主たるものではない社会インフラの美しさが引き出されていました。
今回は、ベルギーの建築家ローラン・ネイさんの手掛けた橋でした。
これまでとは対称的に、建築家の意図した美が既にある状態から何を抽出するのかに興味がありました。
左)柴田敏雄《Second Schelde Bridge,Temse,Belgium 2013》2013年 / 右)柴田敏雄《Smedenpoort Footbridges,Bruges,Belgium 2013》2013年 共にインクジェット・プリント
その場所に、その瞬間建っていること。
そんなシンプルな美しさを感じました。
この建築と写真という組み合わせは、担当学芸員の方が長年温めてきた企画とのことです。
内覧会では、図録に載っていないような、言われなければ気づかないような点まで解説して頂き、作品の背景を知ることができました。
平日(第1・第3金曜日 14:00~)のみの開催ですが、ギャラリートークもお勧めです。
会場 | 東京都写真美術館 |
開催期間 | 2018年11月10日(土)~2019年1月27日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし、12/24、1/14は開館。12/25、1/15は休館)、年末年始(12/29~1/1) |
開館時間 | 10:00~18:00、木・金は20:00まで(12/28、1/4は18:00まで、いずれも入館は閉館30分まで)、1/2・3は11:00~18:00 |
所在地 | 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内 |
03-3280-0099 |
HP : http://topmuseum.jp |
料金 | 一般 600円、学生 500円、中高生・65歳以上 400円 |
展覧会詳細へ |
「建築 × 写真 ここのみに在る光」 詳細情報 |
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