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    レポート
    蔡國強展:帰去来
    横浜美術館 | 神奈川県
    世界的な現代美術家、"故郷"の日本へ
    火薬を爆発させてカンヴァスや和紙に画像を定着させる「火薬ドローイング」で、世界を舞台に活躍する現代美術家の蔡國強(ツァイ・グオチャン/さいこっきょう、1957-)。日本では7年ぶりとなる大規模個展が、横浜美術館で開催中です。
    《壁撞き》2006年、ドイツ銀行蔵
    《夜桜》2015年、作家蔵
    《夜桜》(部分) 2015年、作家蔵
    《人生四季:春、夏、秋、冬》より、左から「春」と「夏」 2015年、作家蔵
    《人生四季:春、夏、秋、冬》より、左から「秋」と「冬」 2015年、作家蔵
    《春夏秋冬》より、左から「春」と「夏」 2014年、作家蔵
    《春夏秋冬》より、左から「秋」と「冬」 2014年、作家蔵
    《朝顔》2015年、作家蔵
    《壁撞き》2006年、ドイツ銀行蔵
    横浜美術館で開催されている蔡國強展。まず美術館1階のグランドギャラリー(エントランス)に、本展のため横浜で制作された新作《夜桜》が展示されています(制作の模様はこちらです)。

    かがり火を挟んで巨大な桜が咲き、上方には睨みを利かせるミミズク。一気に開花して儚く散っていく桜は、火薬との共通点が見受けられます。

    サイズは縦8m×横24mで、蔡の火薬ドローイング作品としては最大級。高知で漉かれた大型の和紙は、近くで見るとかなり分厚い事も分かります。この作品のみ撮影可能です(自撮り棒は使用できません)


    《夜桜》

    二階に進むと、最初の展示室には《人生四季:春、夏、秋、冬》。浮世絵師・月岡雪鼎の肉筆春画《四季画巻》から着想した作品で、性的な表現が含まれます(それほど強烈ではありません)。

    絡み合う二人は、中性的な面持ち。身体には花札の絵柄、背景にも季節感を表す花鳥が描かれています。季節が繰り返されるように、命も巡っていくさまを表しています。

    この作品は、カンヴァスが支持体。鮮やかな色彩を用いた火薬絵画は、蔡にとって新たな試みとなります。


    《人生四季:春、夏、秋、冬》

    中国・泉州市に生まれた蔡。泉州市の徳化窯は中国有数の白磁の産地で、この地で生まれた磁器は古くから欧米でも珍重されていました。

    白磁の職人との協業で生まれた作品が《春夏秋冬》です。4枚のパネルはそれぞれ60枚の白磁板で構成され、薄い磁土を重ねる伝統的な技法で、四季の花と情景が作られています。

    その白磁のレリーフに、蔡は火薬を撒いて爆発。戦災後にも思える痛々しい様相ですが、暴力に立ち向かうように自然の姿が残っています。


    《春夏秋冬》

    同じ展示室の《朝顔》は、横浜美術大学の学生との協働制作です。

    学生がテラコッタで花と葉を制作。その上に火薬を撒いて爆発させ、複雑な陰影が付けられています。花と葉は、天井から吊るされた自然の藤蔓に取り付けられ、まるで天から植物が下りてきたかのように見えます。


    《朝顔》

    展覧会のメインビジュアルになっている話題作が《壁撞き》。2006年にドイツで行われた個展で発表され、日本での公開は初めてとなります。

    等身大の99匹の狼が群れを成し、ガラス壁に突進。はね返されても群の最後に戻り、何度も挑戦しようとしているように見えます。

    ドイツは統一される過程で、ベルリンの壁はあっけなく消滅したものの、東西ドイツの間にはさまざまな障壁がありました。作品のガラス壁は、ベルリンの壁とほぼ同じ高さ。「見えない壁」を壊す事の困難さを表すとともに、挑戦を続ける意義も示しています。


    《壁撞き》

    展覧会名の「帰去来」は、中国の詩人・陶淵明の代表作からの引用で、官職を辞して田園に生きる決意を表したこの詩に、久しぶりに日本という原点に戻る(蔡は1986年から95年に日本に滞在し、筑波大学で学んでいました)蔡の想いが込められています。哲学的な作品を平易な言葉で解説してくれる映像作品も、展示室で上映されています(蔡は日本語が話せます)。ぜひ時間をとってご覧ください

    年齢を感じさせない引き締まった身体で世界中を飛びまわる、超売れっ子アーティスト。横浜での制作期間中も、ホテルのジムでのトレーニングを欠かさなかったそうです。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年7月15日 ]

    蔡國強 帰去来蔡國強 帰去来

    蔡國強 (著), 横浜美術館 (監修), モ・クシュラ株式会社 (編集)

    モ*クシュラ株式会社
    ¥ 2,799


    ■横浜美術館による関連動画
     → アーティスト・トーク
     → オフィシャル・ムービー

    ■蔡國強展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年7月11日(土)~10月18日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    (入館は閉館の30分前まで)
    休館日
    木曜日休館
    住所
    神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
    電話 045-221-0300
    公式サイト http://yokohama.art.museum/special/2015/caiguoqiang/
    料金
    一般 1,500円(前売1,300円、団体1,400円)/高校・大学生 900円(前売700円、団体800円)/中学生 600円(前売400円、団体500円)/小学生以下無料
    ※団体は有料20名以上(要事前予約)
    ※毎週土曜日は、高校生以下無料(要生徒手帳、学生証)
    ※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)は無料
    展覧会詳細 蔡國強展:帰去来 詳細情報
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