ドロンコになって遊んでる子どもの姿が描けなければ、ほんとうにリアルな絵ではないかも知れない。その点、私の描く子どもは、いつも、夢のようなあまさが、ただようのです。しかし、この「子どものしあわせ」の表紙は、そうした迷いをすてて、ほんとうにうれしく描けました。私は、工場の勤労者の生活は深く知らないかもしれませんけど、母と子の姿なら知っています。私も、子をもつ母親だからです。迷うことなく、スッキリした、ある意味では少々モダンなものを、思いきって描こうと決心して、絵筆をとりました。 ――「子どものしあわせ」の表紙絵を描いて(抜粋)いわさきちひろ1963年
「子どものしあわせ」は、母親や教師などに向けて子どもをとりまくさまざまな問題を取り上げる月刊雑誌です。いわさきちひろは1963年から没する1974年までの12年間、この雑誌の表紙絵を描き続けました。子どもを題材とすること以外はどのように描いても構わないという出版社からの依頼は、ちひろにとってとても魅力的でした。
ちひろは自らの願いでもある「子どものしあわせ」という雑誌の名を大切に、表紙絵を描く仕事に取り組みました。ちひろが描いた「子どものしあわせ」の表紙絵は、毎月・臨時増刊号も含めて約150点に及び、ちひろの絵の歴史や発展の軌跡を感じさせる作品群となって、各時代の代表作が生まれました。
本展では「子どものしあわせ」表紙絵の初期の作品から絶筆「あかちゃん」までの中から、13点をピエゾグラフ作品でご紹介します。