アンソールと言えば、「仮面の画家」としてよく知られていますが、この画家を語る上で忘れてはならないもう一つの側面、「リアリスト」としてのアンソールも今回、ご紹介いたします。当時の若いベルギーの画家たちや評論家は、早い時期からアンソールをリアリズムの画家として一目置いていました。
今までのアンソール展では、モダニストのパイオニア(芸術における個人的な慣習や信念を打ち破り到達した)となる前のアンソールは、素晴しい作品を数多く残しておりながら、あまり重きを置かれず、軽視されてきたところもあります。
本展では、同時代の画家や評論家から充分に認識されていたリアリストとしてのアンソールの初期作品から、日本や中国といった極東の美術の強い影響の下に生み出されたグロテスクな作品、そして西洋絵画の伝統的主題を独自に再解釈して行き着いた風刺的な作品までをご紹介いたします。なかでもひとつのハイライトとなるのは、アンソールが葛飾北斎による絵手本『北斎漫画』を模写した一連のデッサンで、これらが日本でまとまったかたちで公開されるのは今回が初めてです。
アンソールの初期作品から晩年までの油彩、デッサン、エッチングを紹介する本格的なジェームズ・アンソール展の開催は、1983年以来約20年ぶりとなります。