屏風絵の美（前期）

　前期は風俗画の中でも久隅守景筆の「四季耕作図屏風」を中心にご覧頂きます。久隅守景（生没年不詳）は、狩野探幽門下の四天王と称され、その画技は高く評価されていますが、伝記には不明なところが多い画家です。大和絵の伝統を吸収して漢画の和様化を目指した作風に特徴があり、前田家に招かれて金沢に滞在したことがわかっています。 　耕作図は、君主が描かれている民の労苦をしのび、また施政の方針とするための鑑戒的性格の強いものですが、日本では「四季耕作図」という一つの独立した画題となりました。守景の四季耕作図は、中国風俗の作品から身近な日本風俗の耕作図へと変化した叙情性に富んだ田園風俗画です。 　加賀の地に滞在した折に、庶民の日常生活に身近にふれた守景の心が描かせた名作をお楽しみください。