「雪国の女」は、昭和40年代の冬の津軽の女性たちを追った作品です。北国の厳しく閉ざされた環境の中で生きる津軽の女たちに魅かれ、氏は7年間毎冬ごとにその地を訪れました。閉ざされた環境に生きる幾世代もの彼女たちは、少女から大人の女性、そして老女へと、年輪を刻むドラマのように展開され、氏の眼には北国の幻想的な変身と映りました。酒場の女、小屋の女、成人式の乙女、夫と死別した寡婦、賭場の老女。雪国に生きる、様々な年代や境遇の女たちの根底に、共通して流れる情緒や厳しさが、叙情的に写し出されています。
また「雪下有情」は、北国に魅せられた氏が、同時期に新潟県北魚沼郡の山間地帯を訪れ、その地に生きる人々の姿を撮影したものです。日本有数の豪雪地帯に生きる人々は、純朴で優しく、見ず知らずの氏を暖かく迎え入れてくれました。すさまじい豪雪との闘いの中で、懸命に生きる人々。そこには、風土と人間の営みが、今よりも遥かに生きる原理に近い生活があったことを物語っています。
今回の作品展を通じて、北国が織り成す特有の風土や、現代人が失いつつある人間の根源的な営み、などを感じていただければと思います。