『Tokyo X』は、1984年にNHKが放送した、イギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に関する番組をきっかけに、撮影されたものです。
一見すると平等で秩序正しい理想的な社会だが、システムによって徹底的に管理・統制され自由が奪われたオーウェル的世界。氏の眼には、コンピューターに管理され、バーチャル化していく東京の姿と重なりました。表参道のマリアとキリスト画の上に置かれたCASHの文字、西新宿の高層ビル街に設置された監視カメラ、奇抜なメイクやファッションに身を包んだ原宿の若者など。東京という都市の姿を改めて直視した作品は、目に見えない大きなシステムに飲み込まれていく東京や、その得たいの知れないものに支配されていく人々を写し出しており、まさに現在の都市の姿を予見しているかのようです。タイトルの『Tokyo X』は、訳が分からない東京、怪しげな影が忍び寄る東京、“謎”の東京、を意味しています。
今回の展示では、写真集『Tokyo X』(2000年)と、オーウェル的な東京の姿を更に追求した『Tokyo Freedom』(2005年)を併せ、その中から約90点(全作品モノクロ写真)をご紹介いたします。