『史記』は前漢の司馬遷(しばせん、前145~前87年)が著した130巻に及ぶ中国最初の通史で、歴史書としてばかりでなく人生訓や処世術を学ぶ教養書としても親しまれてきました。近年では、地下深く「水銀の百川」が流れていたと『史記』に記述される秦始皇帝陵・地下宮殿の存在が科学調査によってほぼ確実視されるなど、『史記』と考古学が密接に関わり合いながら中国古代世界を明らかにしています。本展では、秦及び前漢が拠点を置いた陜西省(せんせいしょう)の出土文物124件(日本初公開を多数含む)を厳選し、展覧することで、『史記』が活写する春秋戦国時代から始皇帝や項羽・劉邦を経て前漢・武帝の時代に至る約700年間(前770~前87年)を、文献と考古学資料の両面から紹介します。
特に、2200年前の彩色が奇跡的に全身に残る秦始皇帝陵・兵馬俑(跪射俑・きしゃよう)の彩色保存処理が、1999年の発見以来漸く完成し、この度、世界初公開となります。さらに会場のVR(バーチャル・リアリティー)シアターでは、コンピューターグラフィックスによって当初の色彩が鮮やかに再現された兵馬俑軍団の勇姿を、圧倒的な迫力で体感していただくことができます。
秦・漢帝国の歴代皇帝は生命の不滅を信じ、驚くべき執念をもって地上の帝国を地下の陵墓に再現しようとしました。私たちは2000年もの時空を超えて、地下世界からの出土品に、『史記』に記録された地上世界の面影を見出すことができます。