ゴッホの自画像やセザンヌの静物画といった名画や女優に扮したセルフポートレート作品をはじめ、映画や演劇、パフォーマンスなど幅広い活動を展開する美術家・森村泰昌(もりむら・やすまさ)。森村は、1951年、大阪に生まれ、京都市立芸術大学に学びました。1988年、ベネチア・ビエンナーレのアペルト部門に選出されて一躍注目を集め、その後も国内外で多くの展覧会や、著作によって高い評価を得ています。
横浜美術館では、1996年に国内初の大規模な個展「森村泰昌 美に至る病-女優になった私」を開催し、当時、森村にとって新たな取り組みであった女優シリーズを紹介すると共に美術館の中に映画館を出現させました。同展から11年を経て、本展では美術館を教室に変え、フェルメール、セザンヌ、ゴッホ、ゴヤといった西洋美術史上の名画に扮する「美術史シリーズ」の作品に焦点をあてて、初期から現在にいたる約80点を、まるで学校で授業を行っているかのように紹介します。本展は、ホームルームにはじまり、1時間目から6時間目まで、モリムラ先生による授業(無料音声ガイド)として展開します。さまざまな「美」について学んだ後は、最後のセクション「放課後:ミシマ・ルーム」で、一転、三島由紀夫と三島の美学を具現化したアポロンの姿になった森村泰昌に出会います。そこで私たちは、次代へ受け継がれるべき日本の美術について、森村からのメッセージを強く心に刻み込まれることでしょう。
併せて会期中には、ホームルームから放課後まで、展覧会に呼応するように関連事業(授業)を開催し、その最後を飾る「放課後の上映会」では、最新作を含むパフォーマンス映像を特別上映いたします。
「美の教室」での1日の授業は、美術の歴史を学ぶことができるだけでなく、森村作品における〈自画像〉〈ものまね〉〈笑い〉といったテーマに触れ、美術や教育のあり方について、あらためて考える機会となるでしょう。
【展覧会の時間割】
本展は、全体を通して1日の学校の授業になっています。「授業」は、モリムラ先生によって進められ(音声ガイド:来場者全員に無料貸出)、来場者は「生徒」となって「美」について学ぶことができる、授業形式の展覧会です。各セクションは、「ホームルーム」「1~6時間目」「放課後」で構成され、一日の授業をめぐった後、会場に用意されたワークシート型の試験を受けると、修了証が発行されます。(参加無 ソ)
ホームルーム
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1時間目:フェルメール・ルーム[絵画の国のアリス]
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2時間目:ゴッホ・ルーム[釘つき帽子の意味]
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3時間目:レンブラント・ルーム[負け犬の価値]
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4時間目:モナリザ・ルーム[モナリザのモナリザの、そのまたモナリザ]
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5時間目:フリーダ・ルーム[眉とひげ]
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6時間目:ゴヤ・ルーム[「笑い」を搭載したミサイルの話]
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放課後:ミシマ・ルーム