世田谷美術館所蔵　素朴派芸術の世界展

　本展のテーマとした「素朴派」は美術の一傾向です。税関吏として22年間働き続け、その仕事の合間に描き続けたアンリ・ルソー。初めて出品した展覧会では「しょせん日曜画家にすぎない」と酷評され「税関吏ルソー」とあだ名されました。画家としての活動時間を増やすため職を辞めた後は、貧しい生活を続けながらも「眠れるシプシー女」や「戦争」などの大作を仕上げ、ピカソなど当時の前衛的な画家や画商からの評価を得ました。また、庭師の子として生まれ、苗木商、測量技師、などの仕事をするかたわら絵を描いたアンドレ・ボーシャン、夜は工場で重労働をこなしながら、昼間、絵を描いたカミーユ・ボンボワなど、本業を持ちながらも絵を描き続け、その才能を世に知らしめたナイーフ・アーティスト（素朴派の芸術家）たち。その対象を写実的に描写した、具象的な作品はまさに芸術における「素朴」を表現しています。