出光コレクション名品展　ユートピア—描かれた理想郷

　私たち人間は理想を抱くことができます。人類の営為は、この理想に強く向かい、より充実した環境、心理状態を求めて高度な文明を生み、世界各地に多彩な文化と歴史を築き上げてきました。 　一方こした中で、古来人々は、実社会ではどうしても実現することができなかった“至福”、“至善”の世界へ夢を抱き続けてきました。この理想的な世界への憧憬は、人類の知的所産である文学や芸術のなかに盛んに表現されています。それらは、各時代、地域によって多様な展開していますが、殊に中国・日本などの東洋では、古代の神仙思想や老荘思想の広がりを主な背景として、さまざまなユートピア（理想郷）のイメージが創り出されています。これらは、いわばフィクションであるが故に自由で、創作力ゆたかであり、私たち現代人の心の内部にも潜むユートピアへの願望を、強く刺激するものといえるでしょう。