20世紀を代表するスペインの巨匠ジョアン・ミロ(1893-1983)。その抽象的でありながら、生命の輝きを巧みに捉えた、無垢で独創的な絵画は、世界中から高く評価されています。
ミロは1893年、地中海に面したスペインのカタロニア地方の主都、バルセロナに生まれました。画家を志しつつも、両親の希望により商業学校に通うかたわら、ピカソも過去在籍していたラ・リョンハ美術学校に通いますが、両親の勧めで会計士になります。しかし仕事があわず体を壊し、療養後はバルセロナでガリ美術学校に入学します。
卒業後、画家としてスペインで順調なキャリアを積んでいたミロは、1919年(26歳)に初めてパリを訪れ、同郷のピカソと会い、ダダ、シュルレアリスム運動のはじまりを目撃します。
1920年からは、夏はカタロニア、冬はパリのアトリエで過ごし、シュルレアリスム運動の重要な作家として国際的に活躍しますが、常に彼の作品の根底にあるのは、明るい太陽、青い海に囲まれた故郷カタロニアで培われた、明るく、天真爛漫な子どものような詩的な世界でした。
同じ時期に活躍したスペイン生まれの作家の中で、ピカソはフランスを、ダリはアメリカを拠点にしましたが、ミロは戦後、とくにマヨルカ島のパルマに大きなアトリエを構えてから、多くの時間を故郷過ごしました。自身を(フランスでも、スペインでもなく)「カタロニアの画家」と呼び、「地中海的性格、いいかえれば明快さ」が自分の身上であるというミロの哲学は、自然や、宇宙に内在するイメージを、目に見える明快なかたちで作り出すことにあったといえましょう。