日本は1931年の満州事変から1945年の終戦まで15年もの間、いわゆるアジア太平洋戦争期にありました。画家たちの中には1938年の国家総動員法、翌年の国民徴用令により、兵士として従軍し、軍による「作戦記録画」制作に携わることになった人もいました。1941年に画家の福沢一郎と詩人で美術評論家の瀧口修造がシュルレアリスムと政治との関わりについて治安維持法違反の嫌疑で逮捕されると、1930年代に盛り上がりを見せていたシュルレアリスム風の絵画は影を潜めました。その頃には絵具などの画材も配給制となり、画廊も次々と閉鎖され、画家たちの制作や発表の場も制限を受けました。戦地や空襲により亡くなった画家もいます。戦後もまた戦争体験やそれに対する画家の考えをもとに制作が続けられています。また特集展示として、末松正樹による戦中から晩年までの作品をまとめてご紹介します。1939年に渡仏した末松は、戦中にフランスで捕虜となりながらもデッサンに励み、戦後に帰国した後も抽象的な絵画を発表し続けました。本展では、板橋区立美術館のコレクションの中から戦中に描かれた作品から戦後の基地問題を取り上げた作品までを、画材の配給票などの資料と共にご紹介いたします。「戦争」を日本の芸術家たちがどのように考え、とらえたかを考える展覧会です。