アンリ・ル・シダネル(Henri Le Sidaner 1862-1939)は20世紀初頭に活躍したフランス人の画家。1862年にインド洋のモーリシャス島で生まれ、1939年第二次世界大戦勃発の数週間前に亡くなるまで、印象主義、新印象主義など様々な芸術的運動を同時代人として目撃しながらも、同時代の印象派、新印象派など様々な芸術的な動きとは距離を置いて独自の画風を発展させました。ジェルブロワの庭、木漏れ日、ガーデンテーブル、ベンチ、薔薇の花、夜の森、夕暮れに家々の窓から漏れる光など身近な題材を淡い色調を用い、どこか内省的でありながら穏やかな空気感を持つ情緒的なタッチで描き出した作風は当時大変な人気を集め、現在でもフランス国内はもちろん、ヨーロッパ、アメリカの重要な美術館に作品が所蔵され、また、各国に熱心な愛好家がいることで知られております。ル・シダネルの作品は、時代や文化を超えて観る者の郷愁を優しく刺激する、普遍的な魅力と暖かさに溢れており、1989年に行なわれたマルモッタン・モネ美術館(パリ)での大規模な個展をはじめ、近年ヨーロッパで頻繁に展覧会が開催されています。日本でも存命当時は、各種の展覧会に出品されるなどして盛んに紹介されていましたが、現在ではいくつかの美術館に数点常設展示されているに留まり、個展の開催が長らく待たれていました。本展は作家の曾孫で美術史家のヤン・ファリノー=ル・シダネル氏の協力のもと、油彩、ドローイングなど約70点を展示、日本でル・シダネルの作品を包括的に紹介する、初めての催しとなります。