レオナルド・ダ・ヴィンチにも匹敵する多彩な仕事を展開し、20世紀美術に新しいヴィジョンをもたらした芸術家。それが、モホイ=ナジ・ラースローです。
モホイ=ナジは、社会主義革命や世界大戦が勃発する不安定な情勢下、母国ハンガリーからオーストリア、ドイツ、オランダ、イギリス、アメリカへと移り住みながら、「アートとテクノロジーの融合」を目指して実験を繰り返し、新たな芸術価値の創造に挑み続けました。
彼が手がけた仕事は、絵画、写真、彫刻、グラフィック・デザイン、舞台美術、映画と多岐にわたりますが、それらはいずれも、彼の革新的なアイデアが生み出した「光と運動による造形」でした。 こうしたマルチ・アーティストとしての活躍のみならず、ドイツの総合芸術学校「バウハウス」で教鞭をとり、後にシカゴに設立された「ニュー・バウハウス」の校長を務めたモホイ=ナジは、教育者としても名を馳せ、その芸術理念や教育哲学は広く後世に伝えられています。
本展は、多数の貴重な初公開作品を含む遺族のコレクションを中心に、ハンガリー時代の素描や構成主義作品、代表作となるキネティック彫刻《ライト・スペース・モデュレータ》、カメラを使わない写真「フォトグラム」、アメリカ時代のカラフルな絵画など、国内外から集められた約270点によってモホイ=ナジの全貌を明らかにする、日本で最初の本格的な回顧展です。