この度、日本デザインコミッティーでは、美濃のやきもの研究会と共催による展覧会「美濃のラーメンどんぶり展」を2015年度の正月企画として開催の運びとなりました。
美濃(岐阜県東濃西部)は陶磁器の産地として、中世以来、日本最大の生産規模と優れた技術を保持してきました。その実態と魅力を多くの方に知っていただくため、地元産業界、また行政などから有志が集まって結成した「美濃のやきもの研究会」が主体となり、企画したのが、この「美濃のラーメンどんぶり展」です。
中国起源の「ラーメン」は、日本で麺料理として独自の発達を遂げ、現在では世界各地のさまざまな食習慣、宗教を持つ人々に受け容れられています。日本人にとっても元は外来の食だったはずですが、今や地方ごとにご当地ラーメンが考案され、老若男女を問わず、多くの人がごく日常的に口にしている、「国民食」と言ってもいいでしょう。ところがその器であるラーメンどんぶりの90%が美濃で生産されていることは、ほとんど知られていません。
美濃で作られる陶器の中には、織部焼や志野焼のように、主に茶陶として珍重され、近世初期に遡る作が文化財指定を受けるものも数多くあります。いずれも非常に豊かな魅力を備えていますが、残念ながら「誰もがよく知っている」「日常の器」ではありません。そこで今回は、多くの人が手にした経験があり、その形状や色柄を明確にイメージできる、つまり他人事ではない「ラーメンどんぶり」をテーマにデザイン展を開催することで、まずは美濃のやきものへの親しみや関心を惹起したいと考えました。その上で、どんぶりのデザインによって、ラーメンの味わいや食べる時の心理まで変わってくることを意識していただけたなら、自ずと日常の食卓で使う器についても同じように意識を払い、選ぶ楽しさを感じていただけるようになるのではないかと期待しています。
本展では、企画主旨にご賛同下さった、25名の方々に「ラーメンどんぶり」と「レンゲ」のグラフィックデザインをしていただきました。2015年の年始を楽しく飾る展覧会となります。