まず最初は「映画のタイトルデザイン」の基本から。映画タイトルの仕事というと、いわゆる題字のデザインを想像しがちですが、それだけではありません。
そもそも映画には、劇中の文字(場面の説明で用いられる「銀座」「五年後」など)、エンディングクレジットタイトル(末尾で出るキャストやスタッフ名)など多くの文字が用いられ、作品と印象を合わせる必要があります。
さらに重要な事は、映画が動きをともなう表現であるという事。文字が現れて消えるタイミングはもちろん、そのシーンが静かな場面か動きがあるかの違いで、同じ文字でも印象が異なるため、経験に裏付けられた職人的な技術が必要になるのです。
文字が出るスピードによって観客の印象は代わります。タイトルの長さを提案する資料にはコマ(24分の1秒)単位での指示が残ります続いて、日本の映画タイトルデザインの歴史を解説。映画が無声映画からトーキーへ、白黒からカラーへ、アナログからデジタルへと変化する中、タイトルデザインもその姿を変えてきました。
黒澤明監督の「羅生門」は、映画で使われている扁額がそのままタイトルに。著名クリエイターを起用したタイトルデザインもあり、新藤兼人監督の「触角」は岡本太郎、増村保造・市川崑・吉村公三郎のオムニバス映画「女経」は柳原良平が手がけました。
日本の映画タイトルデザインの歴史そして、赤松陽構造さんの仕事が紹介されます。ずらりと並んだ作品タイトルの中には、ご存じの映画もあるのではないでしょうか。
赤松さんは1948年生まれ。元はカメラマンを志していましたが、ニュース映画などの線画の仕事をしていた父親の急逝を受け、映画タイトルデザインの世界に入りました。黒木和雄、北野武、黒沢清、阪本順治、周防正行監督作など400以上の作品にタイトルを提供。NHK大河ドラマ「八重の桜」のタイトルも赤松さんによるものです。
長年に渡って業界の第一線で活躍しており、毎日映画コンクール特別賞や文化庁映画賞を受賞。昨年は石川県でも企画展が開催されました。
赤松陽構造さんの仕事タイトルの制作は、場合によってはクランクインの前に台本を読んでイメージを掴み、ラッシュフィルム(編集前の映像)を見てからが本番。ラッシュフィルムを見て内容を掌握し、監督の狙いを理解する力が必要です。
映画にあった書体をつくるためには、道具もさまざまです。筆も新品に限らず、わざと使い古したものを用いたり、場合によっては割り箸や小枝まで使うこともあります(実際に「BROTHER」は、割り箸で描かれました)。
仕事道具も紹介実際の映像の中でなければ、本来の魅力が伝わりにくい映画タイトル。会場では映像コーナーも設けられ、作品とともにタイトルをお楽しみいただけます。たっぷりと時間をとって、ご覧ください。
なお、4月26日(土)、6月28日(土)、8月2日(土)には展覧会にあわせたトークイベントも実施。赤松陽構造さんや
東京国立近代美術館フィルムセンターの研究員が、映画タイトルについて楽しく解説します。詳しくは
公式サイトでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年4月23日 ] | | ゆきゆきて、神軍 [DVD]
奥崎謙三 (出演), 原一男 (監督) GENEON ENTERTAINMENT,INC(PLC)(D) ¥ 3,818 |
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