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    レポート
    東京都庭園美術館開館30周年記念 幻想絶佳 :アール・デコと古典主義
    東京都庭園美術館 | 東京都
    幾何学模様と直線だけじゃないんです
    アール・デコは、アール・ヌーヴォーの次の時代に流行した幾何学模様のデザイン、というイメージでよく知られます。東京都庭園美術館もその代表作として有名ですが、既存のイメージとは少し雰囲気の異なる装飾が。今回の展覧会はアール・デコの古典主義という、今までクローズアップされて来なかった一面を紹介する展覧会です。
    ロベール・プゲオン《蛇》 1930年以前 アンドレ・ディリジャン芸術・産業博物館[ラ・ピシーヌ](ルーベ)、パリ国立近代美術館ジョルジュ・ポンピドゥーセンター(パリ)より寄託
    第2室『美術家たちの「古典への回帰」』
    大食堂はラパンをオマージュしたアンサンブル展示。レイモン・シュブのダイニングセットなどがならびます
    2階のホールにはリュールマンの家具など
    左から)アンリ・ラパン《サント=ヴィクトワール山麓、2人の子どもがいるプロヴァンス地方の風景》1920-30年 東京都庭園美術館、国立セーヴル製陶所 ピエール=エミール・ブラックモン(原型製作)《花》と《果実》アンドレ・ディリジャン芸術・産業博物館[ラ・ピシーヌ](ルーベ)
    第9室『第一次世界大戦とカモフラージュ隊』
    第10室『メール ━独歩のアール・デコの画家』
    手前)レイモン・ドラマール スエズ運河防衛記念碑のための模型《力》《知性》 1930年 30年代美術館(ブーローニュ=ビヤンクール)
    アルフレッド・ジャニオ《エロス》 1921-22年頃 ギャルリー・ミシェル・ジロー(パリ)/アンヌ・ドムーリス・コレクション
    淡い色彩と退廃的なイメージのアール・ヌーヴォーは世紀末に大変流行しましたが、1900年ごろには衰退。1910年のミュンヘン装飾美術展を契機に、フランスの装飾美術家たちは、アール・ヌーヴォーを脱し、理性的な線と鮮やかな色彩によってフランスの伝統に立ち返った新様式を模索しはじめます。そして1925年のアール・デコ博で、18世紀の古典主義的な理想を現代的に解釈した、新たな美術様式が確立しました。

    朝香宮邸をデザインしたアンリ・ラパンは、アール・デコ博でパヴィリオンのインテリアデザインを手がけ、それを見た朝香宮殿下が彼に内装デザインを依頼しました。そのため、朝香宮邸には古典主義のアール・デコが多く取り入れられています。


    レイモン・シュブの扉やアンリ・ラパンの壁画が美しい大客室にはジュール・ルルーの家具が置かれています

    今回はいくつかの部屋でアンサンブル展示の手法がとられています。アンサンブル展示とは、アール・デコ博当時によく取られた手法で、家具や絵画彫刻を一つの空間の中で構成し、生活空間を再現するような展示手法です。建物全体がアール・デコの作品といえる朝香宮邸だからこそできる展示です。

    朝香宮邸で最も華やかな大食堂では、アール・デコを代表する鉄工芸家のレイモン・シュブのダイニングセットが中心に据えられたアンサンブル展示。壁画はアンリ・ラパンの作で、古代ローマを思わせる庭園が描かれており、アール・デコの古典主義を思わせます。


    大食堂のアンサンブル展示。

    二階の妃殿下の居室もアンサンブル展示。こちらもレイモン・シュブの家具でティータイムのセッティングです。在りし日もこのような光景だったのでは、と思える品の良い居室にため息が漏れます。


    会場入口から

    新館ではアール・デコの芸術家たちを主に紹介しています。描かれたテーマは神話や寓意など、パリ国立美術学校出身という、アカデミックな古典主義を理解した素地がよくわかります。しかし、シンプルな線の表現など、新しい表現が盛り込まれ、単なる古典の模倣ではない挑戦を感じることができます。


    ウジェーヌ・ロベール・プゲオン《蛇》

    今回、同時開催の「饗宴のあと アフター・ザ・シンポジウム」は、スマートフォンの専用アプリをダウンロードすれば、会期中はいつでも体験可能なプログラム。歴史的建造物である朝香宮邸を「記憶の器」と捉え、ありえたかもしれない過去、現在、未来が交錯する物語を館内を自由に回って体験します。

    リニューアルオープン後、初の全館開催の企画展となる本展。美しく磨かれた朝香宮邸で、再評価の兆しが高まるアール・デコの魅力を改めて感じられる機会になりそうです。
    [ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2015年1月16日 ]

    庭園美術館へようこそ: 旧朝香宮邸をめぐる6つの物語庭園美術館へようこそ: 旧朝香宮邸をめぐる6つの物語

    朝吹 真理子 (著), 福田 里香 (著), 小林 エリカ (著), ほし よりこ (著),

    河出書房新社
    ¥ 1,944

     
    会場
    会期
    2015年1月17日(土)~2015年4月7日(火)
    会期終了
    開館時間
    10:00-18:00 (入館は17:30まで)
    休館日
    毎月第2・4水曜日(1/28、2/12、2/25、3/11、3/25)
    住所
    東京都港区白金台5-21-9
    電話 03-3443-0201
    公式サイト http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/150117-0407_artdeco.html
    料金
    一般 1,200(960)円/大学生(専修・各種専門学校含む) 960(760)円/中・高校生・65歳以上 600(480)円
    ※( )内は前売りおよび20名以上の団体料金。
    ※小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
    ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその介護者一名は無料。
    ※第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上の方は無料。

    本展のメインビジュアル、Le Serpent にちなんで、蛇のモチーフや模様を身に着けてご来館のお客様は100円引きでご覧いただけます。(他の割引との併用はいたしません)
    展覧会詳細 「東京都庭園美術館開館30周年記念 幻想絶佳 :アール・デコと古典主義」 詳細情報
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