1968年の展覧会を皮切りに、これまでも何度か沖縄に関する展覧会を開催してきたサントリー美術館。独特の魅力にあふれた琉球美術を、今回は4章とエピローグの構成で展観します。
琉球の美術で最も良く知られているの、紅型(びんがた)ではないでしょうか。主に王族や貴族階層を中心に着用された染物で、型紙を使って模様を染め出します。モチーフに目を向けると、鳳凰や龍は大陸由来、松や桜は日本由来と、琉球の特徴が現れています。
琉球絵画も、中国や日本美術の影響を受けながら発展しました。紹介されているのは、狩野安信が賞賛したという自了(和名:城間清豊)、首里王府の貝摺奉行所の絵師だった山口宗季(唐名:呉師虔)、山口宗季に学んだ宮廷絵師の座間味庸昌(唐名:殷元良)など。
ただ、第二次世界大戦で琉球絵画は大きな被害を受けており、琉球絵画の全容については、今後の研究課題でもあります。
第1章「琉球の染織」、第2章「琉球絵画の世界」展覧会の大きな目玉が「国宝 琉球国王尚家関係資料」。首里王府を治めた尚家に継承された貴重な文物で、沖縄唯一の国宝です。
玉冠をはじめとした王装束は、中国からの使者「冊封使」を迎える際など重要な儀式で着用されたもの。現存する唯一の国王装束です。
「国宝 琉球国王尚家関係資料」は、琉球王国が亡んだ後に、一部の文物が東京に移送されたものです。沖縄戦の被害を受けず、東京でも関東大震災や空襲から大切に守られたため、今日まで色あせる事なく伝わりました。
最後は琉球漆芸。琉球にとって漆芸品は重要な輸出品で、貝摺奉行所による管理のもと、華麗な作品が数多く作られました。螺鈿や沈金など日本の漆器でもお馴染みの技のほか、漆と顔料をまぜた材料を貼って立体的に文様を表す、琉球特有の「堆錦(ついきん)」も見られます。
第3章「琉球国王尚家の美」、第4章「琉球漆芸の煌き」「国宝 琉球国王尚家関係資料」の《玉冠(付簪)》は8/22~9/2に展示されるなど(他の期間は復元品を展示)、会期中は5回に渡る展示替えがあります。展示替リストは公式サイトでご確認ください。
小・中学生とその保護者の方におすすめしたいのが、8月28日(火)の「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」。展示室での「おしゃべり鑑賞タイム」や「びじゅつかんのひみツアー」のほか、6階のホールでは作品づくりも可能です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年7月17日 ]