冒頭で用いた「民藝はヤバイ」。こちらは日本民藝館館長で、21_21 DESIGN SIGHTディレクターの深澤直人さんが、メインビジュアルの《火鉢》(島根県 昭和時代 1940年代)を、率直な言葉で表現したものです。
本展は、日本民藝館の所蔵品から、深澤さんが146点を選定しました。作品を紹介する深澤さんの飾らない言葉は、どれもシンプルながら、ガツンと衝撃を受けます。
ロビーに展示されている趣のある机は、日本民藝館の館長室で実際に使用されているもの。優れた審美眼を持った民藝館の歴代館長たちは、この机の上で民藝を見定めてきました。選び抜かれた作品の展示が、この先に続きます。
ギャラリー1には、深澤さんの個人コレクションも展示。打ちっぱなしのコンクリートと、白一色の棚の上に並ぶ作品は、工芸品のシンプルさを際立たせます。普段は、茶色い棚の上に置かれることが多い木彫りの熊にも、洒脱な印象を受けますね。
現代作家たちの撮り下ろし映像では、シンプルな素材からモノへと変化していく過程に、思わず足を止めて見入ってしまいます。
深澤さんが「ヤバイ」と言うなら、私は「エモい」と表現しましょう。現代若者を中心に用いられる「エモい」は、エモーショナル(emotional:感情的 など)が由来。「感情を動かされた」などの意味で使用されています。
芸術家でも職人でもない…言ってしまえば、素人の手から生み出されてきた民藝。郷土に適した形を追い求めた自由で大胆な作品の数々、プラス、深澤さんの飾らない言葉で紹介。いやーこの民藝、超エモいです。
[ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2018年11月1日 ]