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    レポート
    マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン 展
    三菱一号館美術館 | 東京都
    100年前の「総合芸術家」
    上質な絹地に細かなプリーツを付け、筒状に縫製した「デルフォス」。女性の自然な曲線を美しく魅せる画期的なドレスは、20世紀初頭のファッション業界を席捲しました。デルフォス生みの親、マリアノ・フォルチュニ(1871-1949)にスポットを当てた大回顧展が、三菱一号館美術館で開催中です。
    (左から)《デルフォス(シャンパン)》藤田真理子 / 《デルフォス(オレンジ)》藤田真理子
    (左から)《ヤコポ・ティントレット《聖マルコの奇跡》の模写》 / 《ジャンバッティスタ・ティエポロ《無知に対する美徳と高貴の勝利》の部分の模写》
    (手前のドレス、左から)《デルフォス(黒)》京都服飾文化研究所、《オペラジャケット》神戸ファッション美術館 / 《デルフォス(黒)》藤田真理子 / 《フード付きケープ》神戸ファッション美術館 / (奥のドレス、左から)《ジャケット》京都服飾文化研究財団 / 《デルフォス( セイジグリーン)》神戸ファッション美術館、《「キモノ」ジャケット》神戸ファッション美術館
    (左から)《バラ色の衣装のための習作(アンリエット・フォルチュニ)》 / 《アンリエット・フォルチュニ、画家の妻》
    (ドレス手前)《コート》島根県立石見美術館 / (ドレス奥)《デルフォス(白)》島根県立石見美術館 [ともに展示期間:7/6~8/18]
    《デルフォス(青)》共立女子大学博物館 [展示期間:7/6~8/18]
    《室内着》1910年代 京都服飾文化研究財団
    レオナルド・ダ・ヴィンチ社、ミラノ《デスクランプ》1926年 フォルチュ二美術館
    (左手前のドレス)《デルフォス(黒)》藤田真理子、《コート》藤田真理子 / (奥のドレス)《デルフォス(アイボリー)》神戸ファッション美術館 / (右手前のドレス)《デルフォス(黒)》藤田真理子

    冒頭でも「デルフォス生みの親」としたフォルチュニですが、その活動はファッションデザインだけではありません。絵画、版画、舞台美術、テキスタイルデザイン、写真、染色技術の発明と極めて幅が広く、あえて肩書をつけるなら「総合芸術家」になるでしょう。


    今回は日本初となるフォルチュニの本格的な回顧展。ヴェネツィアのフォルチュニ美術館が協力し、その多面的な活動も紹介しながら、美しいドレス約30点を見せていきます。


    フォルチュニはスペイン・グラナダ生まれ。同名の父は19世紀スペインを代表する画家のひとりで、母も名門の芸術家一族の出身でした。


    芸術家としてのスタートは、絵画からでした。伝統的な絵画を研究した父に倣い、フォルチュニもティツィアーノやティントレットなど、ヴェネツィア派の作品を模写。父の作品も模写しています。ファッションで名を馳せたフォルチュニですが、「自らの第一義は画家である」としていました。


    フォルチュニは10代からドイツの作曲家ワーグナーを称賛。創作の関心も、絵画から舞台芸術へ広がっていきました。円形パノラマと照明装置を組み合わせた革新的な舞台機構を発明、ヨーロッパ各地の劇場に採用されました。



    舞台の芸術に関わる中で、衣裳に関心を寄せるのは当然の流れです。20世紀初頭は、古代遺跡がブーム。フォルチュニは古代ギリシアの彫像《デルフォイの御者》から着想し、繊細なプリーツをつけたドレス「デルフォス」をデザインしました。


    日本から輸入されたともいわれる最高級の絹地を使ったデルフォスは、とても軽量。動くたびに光の印影がドレス上に浮かび、上品かつ艶やかな印象を与えます。広く大衆の心を掴み、同時代に活躍したポール・ポワレらとともに、女性をコルセットから解放しました。


    デルフォスは登場から100年以上経っていますが、現在でもパーティーでセレブが着る事があります。次々に流行が変わっていくファッション分野において、これほど長く愛される装いは極めて珍しい事です。


    会場にはフォルチュニが撮影した写真も展示されています。フォルチュニは、まだ登場して日も浅かった最新機器に関心を示し、絵画、素描、彫刻、建築、工芸品などさまざまなものを撮影。他の芸術に使うための撮影でしたが、構図の美しさも際立っています。


    来日こそしていませんが、フォルチュニは日本とも関係がありました。裕福だった両親は、甲冑や能面など日本の品々も蒐集。フォルチュニも日本の染め型紙を所有していただけでなく、自らの染色に型染の技術を生かしたともいわれています。


    美しいドレスは、三菱一号館美術館の雰囲気ともピッタリ。いかにも女性の人気を集めそうな展覧会です。第2水曜日17時以降は、女性のみ1,000円で観覧できる「アフター5女子割」もあります(当日券のみ、他の割引との併用は不可)。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年7月5日 ]


    三菱一号館美術館―丸の内に生まれた美術館三菱一号館美術館―丸の内に生まれた美術館

    三菱地所(編集)

    武田ランダムハウスジャパン
    ¥ 1,091

    料金一般当日:1,700円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

    会場
    会期
    2019年7月6日(土)~10月6日(日)
    会期終了
    開館時間
    10時~18時 / 金(祝日を除く)のみ10時~20時
    ※10/5より開館時間が変更になりました。
    ※いずれも最終入館は閉館30分前まで
    休館日
    月曜日(ただし、祝日・振替休日の場合。9/3とトークフリーデーの7/29、8/26は開館)
    住所
    東京都千代田区丸の内2-6-2
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://mimt.jp/fortuny/
    料金
    一般 1,700円 / 高校・大学生 1,000円 / 小・中学生500円

    ※前売券は一般のみ(1,500円)
    ※前売券は2019年3月14日~7月5日まで販売。販売場所は、ローソン/ミニストップ、チケットぴあ、セブンチケット、都内チケットポート、三菱一号館美術館チケット購入サイトWEBKET。
    ※障がい者手帳をお持ちの方は半額、付添の方1名まで無料
    ※学生無料ウィークは7/20~31
    展覧会詳細 マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン 展 詳細情報
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