詩人、歌人、小説家、劇作家、演出家、劇団主催者、写真家、競馬評論家など様々な顔を持つ寺山修司。出身地の青森県三沢市に彼の記念館があります。
今年、25周年記念特別企画「寺山修司のラジオドラマ」展が開催されました。今でもコアなファンがいるという寺山のラジオドラマを聴きに行ってきました。記念館の様子と共にご紹介します

展示室入り口に寺山修司がいろんな質問に答えている動画があります。
「自分を数えるときどんな単位が良いですか?」「行く道と帰り道どちらが好きですか?」「世界中の人が同じ名前を持つとしたら、なんという名前を付けますか?」秀逸すぎる質問にも、動揺せずにユーモアを交えて答えています。(特に名前に関する回答が印象的でした。。。なるほど、と思いました。)

寺山修司にとって「机」は特別な言葉。自伝的映画『田園に死す』や歌集『テーブルの上の荒野』でも「机」から物語が始まっています。薄暗い展示室の中入ると、たくさんの「机」が目の前に広がります。その一つ一つの机の引き出しに、寺山の詩や短歌、俳句、演劇、スポーツなどの軌跡を見ることができます。

引き出しの中。1967年演劇実験室「天井桟敷」『青森県のせむし男』を履歴書を使って紹介しています。家族構成欄の父に寺山修司、職名「作」、母に東由多加、横尾忠則、美術と面白い紹介の仕方だなと思いました。

薄暗い「机」の展示室を進み、後ろを振り向くと、大きな「死」「私」の文字、「一年一組空気女」と名乗る女、釘が刺さった犬、不気味だけど何故か見たくなってしまう世界が広がっています。

横尾忠則がデザインしたブックカバーの展示。

寺山が監督した映画のポスター。『草迷宮』で主演した俳優の三上博史氏は、寺山を慕い今なお記念館にきて寺山の歌謡曲や朗読劇を公演しています。

寺山は20代の時、谷川俊太郎の勧めでラジオドラマの脚本の仕事をしていました。企画展示室では、夜の薄暗い部屋の中でラジオ聞いていた当時の雰囲気を味わうことができます。
『元フットボール選手の男が、自分が気が狂っている(ボールが日に日に膨らんでいるように見えたり)思いながら身の上を語る話と、男女が車を盗みデートをしている最中、車が故障し、トランクを見てみると中に死体があった話、同時進行で進む2つの話にジャズを加え、絶妙に絡み合っていく展開に寺山の才能を感じます。挿入歌の独特なリズムや野蛮な歌詞に不安を掻き立てられたり、異世界の空間に入り込んだような奇妙な感覚を味わうことができます。

寺山が最も賞を獲得した分野はラジオドラマでした。国内だけでなく、国際的な放送賞でもグランプリを獲得しています。館内では、寺山自身が持っていたラジオドラマを多数聞くことができます。寺山が描きたかった世界が凝縮され、初めての方も、寺山を知る良い機会です。

お土産売り場も充実していて、天井桟敷のポストカードを買ってしまいました(^^)

[ 取材・撮影・文:convallaria majalis / 2022年8月21日 ]
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