“絵とことば”をテーマに、こどもから大人まで楽しむことができる美術館「PLAY! MUSEUM」。2020年のオープン以来同館で初めてとなる、アニメーションを紹介する展示がはじまりました。
会場では、昨年の秋にNetflixオリジナル作品として全世界公開された、堤大介が監督を努める『『ONI ~ 神々山のおなり』の世界を紹介。
ピクサー出身の堤大介とロバート・コンドウ率いるアメリカのアニメーションスタジオ「トンコハウス」は、デビュー作『ダム・キーパー』(2014年)がアカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされるなど、注目のクリエーターです。
PLAY! MUSEUM「トンコハウス・堤大介の『ONI展』」会場入口
会場は、3つの章で構成。1章ではストーリーを緩やかに追いかけながら作品の世界に没入することができます。
山形の手漉きの和紙を使用した小さなスクリーンには、堤監督が力を入れたという、屋久島をモデルとした日本の自然の情景がイントロダクションとして映し出されています。
山形の手漉きの和紙を使用したスクリーン
展覧会タイトルにもなっている「オニ」にちなみ、武蔵野美術大学民俗資料室が所蔵する、実存していた日本各地のオニのお面も展示。どこか愛らしく多様な「オニ」について知ることができます。
「オニ」のお面
本編は、森に暮らすユーモラスな妖怪や神々が、心に潜む恐れや闇と向き合いながら成長するストーリー。渦巻き状の会場の中に入っていくと現れるのは「もどりばし」。この橋を通ると、オニが棲む闇の世界へ通じていきます。
闇の世界へ通じる「もどりばし」
映像作品同様、随所に手仕事が感じることができる今回の展覧会。闇の世界に散りばめられている新潟の六角巻凧や提灯は、こども達に風合いを感じてほしいとつくられたものです。
新潟の六角巻凧や提灯
中央の大きなスクリーンでは、物語のクライマックスを模した様な展示が展開されています。キャラクターそれぞれのバックグラウンドやアイデンティティが揺さぶられるシーンです。
会場風景
仲間によびかける意味で、太鼓をたたくと現れる森に住む精霊の様子も光の演出で表現されています。闇の正体は何なのか、太鼓を叩きながら体感することができる空間です。
会場風景
光のインスタレーション
第2章『ONI』作品が生まれるきっかけから完成までを、ダイジェストで紹介するメイキングブースです。
メイキングブース
高校卒業後に単身渡米して以来、アメリカを拠点している堤監督。タイトルを『ONI』とアルファベット表記にした点には、日本に対するこだわりがみえてきます。ロゴデザインも、ロサンゼルス在住の書家・山口碧生による力強い筆文字で表現されています。
メイキングブース
3章のシアターでは、『ONI』作品のほか『ダム・キーパー』などのアニメーションを味わうことができます。
日本人に見てほしいという思いで『ONI』の制作を行ったと語る堤監督。ストーリーの面白さだけでなく、作ることの大切さや楽しさを家族や友人と味わって持ち帰れる展覧会になっています。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2023年1月20日 ]