世界的グラフィックデザイナーの福田繁雄さんは岩手県二戸市に疎開し、少年期を過ごしました。二戸市には福田さんのゆかりの地として、福田繁雄デザイン館(二戸市シビックセンター内)が設立されています。作品と共に館内をご紹介したいと思います。

福田さんは、日本万国博公式ポスター製作、ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ金賞、ニューヨークADC名誉の殿堂賞など様々な賞を受賞しており、館内にはそれらのポスターの一部が展示されています。
福田さんの代表作「VICTORY」は、ポーランド戦勝30周年記念ポスターコンクールグランプリを受賞しました。弾丸が大砲の方を向いているデザインは、戦争のむなしさとばかばかしさを表しています。

左下に見える車の作品は「ペチャンカー1号車」。正面から見ると実際の車と同じように見えますが、奥行が短い寸法になっています。その他にも福田さんのユーモアあふれる作品がたくさんありました。
福田さんは、常識的な生活をひっくり返す「常識の裏側」が新しいアイデアを生み出すと言っています。生活を楽しく豊かにするユーモア溢れる作品がたくさん展示されていました。

こちらの作品も、福田ユーモアが詰まった代表作の一つ「使えない食器シリーズ」。よく見ると全て日常生活では使えませんが、白い陶器は品があり、欲しくなるような作品でもあります。

こちらも福田さんの代表作のひとつ。大量のスプーンとフォークが交錯し、一つの塊になっています。このままでは、ただの廃棄されているスプーンとフォークに見えますが、当たっているスポットライトを切り替えると、あるものの影が映し出されるしくみになっています。さて、何の影が現れるでしょう?ぜひ、来館して確認してみてください。

こちらは、一見するとマカロニに人の体がついている、通称「マカロニ星人」と言われている作品です。太陽が当たると、春分と秋分の日前後だけ、ヒマワリの形の影が地面に写る作品です。
福岡県北九州市で見ることができます。

こちらは、福田さんが当時の学生と一緒に製作した万国旗を利用したモナリザ。来館したら、すぐに目に入る作品です。万国旗を上下逆さまにしたり等工夫を凝らした作品は見ごたえがありました。

館内の窓から庭を見ると、男性の顔が浮かび上がったモニュメントが見えます。この男性は二戸市出身の物理学者・田中舘愛橘さんです。田中舘愛橘はローマ字の普及に努めた人で、その功績を称え、ローマ字でデザインされたモニュメントを製作しました。

近くで見ると、字体の太さ細さが違うローマ字の羅列で描かれています。

その他にも、企画展やトリックアートで遊べる展示などもありました。「日本のエッシャー」とも言われた福田繁雄さん。日常生活を楽しくゆかいにするユーモアは、常識から外れたところにあると教えてくれました。そして、新しいアイデアは、今ある自分の常識の裏側にあるのだと気づかされました。


[ 取材・撮影・文:convallaria majalis / 2023年3月23日 ]
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