IM
    レポート
    特別展「京都・南山城の仏像」
    東京国立博物館 | 東京都
    京都府の最南部、南山城(みなみやましろ)の地に伝わる貴重な仏像の数々
    9段階の極楽往生にならい平安時代に流行した九体阿弥陀、現存唯一の作例
    サクラ材で作られた3メートルの巨像など、他ではあまりない珍しい仏像も

    南山城(みなみやましろ)と呼ばれる、京都府の最南部、木津川流域。奈良時代には都が置かれ、その後も大寺院や中央貴族と深く関わったこの地は、独自の仏教文化が育ち、多くの貴重な仏像が伝わります。

    南山城にある浄瑠璃寺(京都府木津川市)に安置されている平安時代の阿弥陀如来坐像9体が、約110年ぶりに修理完成したことを記念した展覧会が、東京国立博物館ではじまりました。


    東京国立博物館「京都・南山城の仏像」会場入口
    東京国立博物館「京都・南山城の仏像」会場入口


    展覧会の冒頭は、海住山寺の重要文化財《十一面観音菩薩立像》。表情はやや厳しめながら、衣は変化に富んだ美しい表現の像で、全体的に保存状態が良好です。


    東京国立博物館「京都・南山城の仏像」会場より 重要文化財《十一面観音菩薩立像》平安時代 9世紀 京都・海住山寺(木津川市)
    重要文化財《十一面観音菩薩立像》平安時代 9世紀 京都・海住山寺(木津川市)


    展覧会のメインである国宝《阿弥陀如来坐像》は、会場奥にあります。9体が修理されましたが、出展されているのはうち1体です。

    阿弥陀如来が9体あるのは、9段階の極楽往生になぞらえたもの。平安時代に貴族の間で流行しましたが、九体阿弥陀が現存するのは浄瑠璃寺だけです。


    東京国立博物館「京都・南山城の仏像」会場より 国宝《阿弥陀如来坐像》(九体阿弥陀のうち)平安時代 12世紀 京都・浄瑠璃寺(木津川市)
    (左手前)国宝《阿弥陀如来坐像》(九体阿弥陀のうち)平安時代 12世紀 京都・浄瑠璃寺(木津川市)


    禅定寺の《十一面観音菩薩立像》は、高さ3メートルにおよぶ巨像。仏像の素材としては珍しいサクラで作られており、瑞々しい顔立ちや浅くゆるやかな彫りは、10世紀末の仏像の特徴です。


    東京国立博物館「京都・南山城の仏像」会場より 重要文化財《十一面観音菩薩立像》平安時代 10世紀 京都・禅定寺(宇治田原町)
    重要文化財《十一面観音菩薩立像》平安時代 10世紀 京都・禅定寺(宇治田原町)


    神童寺の《不動明王立像》は、左胸に垂れる弁髪がないなど、不動明王としては珍しい作例。

    禅定寺の《文殊菩薩騎獅像》は東大寺系寺院に伝わる文殊菩薩像として早い時期の像で、獅子が制作当時のものである点も貴重です。


    東京国立博物館「京都・南山城の仏像」会場より (左から)重要文化財《不動明王立像》平安時代 12世記 京都・神童寺(木津川市) / 重要文化財《文殊菩薩騎獅像》平安時代 10世紀 京都・禅定寺(宇治田原町)
    (左から)重要文化財《不動明王立像》平安時代 12世記 京都・神童寺(木津川市) / 重要文化財《文殊菩薩騎獅像》平安時代 10世紀 京都・禅定寺(宇治田原町)


    奈良県と隣接する京都府の最南部である、南山城。現在の交通網では、やや行きにくい地ですが、奈良時代後半には聖武天皇がこの地で恭仁京を造営。山城国分寺では国の重要な儀式が行われるなど、日本の中心といえる場所でした。

    南山城の歴史や文化の奥深さを辿ることができる、貴重な展覧会です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年9月15日 ]

    重要文化財《地蔵菩薩立像》平安時代 12世紀 京都・浄瑠璃寺(木津川市)
    重要文化財《普賢菩薩騎象像》平安時代 11世紀 京都・岩船寺(木津川市)
    会場
    東京国立博物館
    会期
    2023年9月16日(土)〜11月12日(日)
    会期終了
    開館時間
    9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)
    休館日
    月曜日、9月19日(火)、10月10日(火) (注)9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開館
    住所
    〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    料金
    一般 1,500円(1,300円)
    大学生 800円(600円)
    高校生 500円(300円)

    (注)( )内は前売り料金
    (注)中学生以下、障がい者とその介護者一名は無料です。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。
    (注)混雑時は入場をお持ちいただく可能性がございます。
    (注)特別展観覧料で、特別展ご観覧の当日に限り総合文化展もご覧いただけます。
    (注)前売券は、東京国立博物館正門チケット売場(窓口、開館日のみ、閉館の30分前まで)、展覧会公式サイト、各種プレイガイドで、2023年7月18日(火)~9月15日(金)まで販売。
    展覧会詳細 特別展「京都・南山城の仏像」 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    【八尾市立歴史民俗資料館】学芸員募集(歴史担当)/※要学芸員資格 [契約社員/正社員登用制度あり]◆年休120日以上・未経験も歓迎! [八尾市立歴史民俗資料館]
    大阪府
    荻窪三庭園 施設管理運営スタッフ募集! [荻窪三庭園]
    東京都
    日本科学未来館の科学コミュニケーターを募集中 [日本科学未来館]
    東京都
    刀剣博物館 経理職員募集 [刀剣博物館]
    東京都
    熱海市役所 学芸員募集中! [熱海市役所]
    静岡県
    展覧会ランキング
    1
    国立西洋美術館 | 東京都
    モネ 睡蓮のとき
    開催中[あと94日]
    2024年10月5日(土)〜2025年2月11日(火)
    2
    東京都美術館 | 東京都
    田中一村展 奄美の光 魂の絵画
    開催中[あと22日]
    2024年9月19日(木)〜12月1日(日)
    3
    麻布台ヒルズ ギャラリー | 東京都
    ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―
    開催中[あと85日]
    2024年11月1日(金)〜2025年2月2日(日)
    4
    東京国立博物館 | 東京都
    挂甲の武人 国宝指定50周年記念  特別展「はにわ」
    開催中[あと29日]
    2024年10月16日(水)〜12月8日(日)
    5
    日本科学未来館 | 東京都
    特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅」
    開催中[あと87日]
    2024年11月6日(水)〜2025年2月4日(火)