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    レポート
    自分がつくっているのに嫌いなもの ― 21_21 DESIGN SIGHT「ゴミうんち展」(レポート)
    21_21 DESIGN SIGHT | 東京都
    「ゴミ」と「うんち」を通してデザイン視点から「循環」に向き合う展覧会
    まさかの素材で作られた動物の形をした立体造形。かたちになった生命活動
    展覧会用の木製パネルが展示什器に。ゴミとそうでないものの境界を考える

    人間が活動すると必ず生まれる、ゴミとうんち。循環型の社会を考える上で、必ずネックになる存在です。

    ゴミやうんちを好きな人はあまりいないと思われますが、「ゴミうんち」という新しい概念をきっかけに、デザインの視点から「世界の循環」に向き合うことで、新しい気付きを促す企画展「ゴミうんち展」が、21_21 DESIGN SIGHTで開催中です。


    21_21 DESIGN SIGHT「ゴミうんち展」会場より 21_21 DESIGN SIGHT
    21_21 DESIGN SIGHT


    デザイナーたちが真剣に「ゴミうんち」に向き合い、うまれた考察の数々。冒頭は展覧会のディレクターも務めている佐藤卓の作品です。

    オレンジ色のボールが乗った砂時計。時計を進めるためには、人の手でボールを外さなければいけません。一人ひとりが手を動かさなければ、環境問題は進められないというメッセージが込められています。

    砂時計の中には、産業廃棄物の焼却後に残ったスラグを砕いたものが入っています。


    21_21 DESIGN SIGHT「ゴミうんち展」会場より 佐藤卓《TIME - B》
    佐藤卓《TIME - B》


    排泄は生き物にとって欠かせない行為ですが、うんちの話は口にしにくいもの。

    人間から動物まで見渡して、うんちにまつわるウンチクをまとめた作品は、その名も「うんち句」です。


    21_21 DESIGN SIGHT「ゴミうんち展」会場より 角尾舞+田上亜希乃《うんち句》
    角尾舞+田上亜希乃《うんち句》


    小さい方の展示室であるギャラリー1は「糞驚異の部屋」。15世紀から18世紀のヨーロッパで様々な珍品を集めた陳列室で、現在の博物館の原形といえる「驚異の部屋」にちなみ、身近なものから宇宙までを見渡して、ゴミうんちにまつわるさまざまなものを展示しています。


    21_21 DESIGN SIGHT「ゴミうんち展」会場より 「糞驚異の部屋」
    「糞驚異の部屋」


    ものづくりにおいて錆は劣化の象徴ですが、その魅力に気づいたのが狩野佑真。金属板を用いて錆を「育て」ています。

    実験を進めるなかで、アクリルに錆の部分だけを転写できることを発見。現在はそれを素材にして、家具や建材に使用しています。


    21_21 DESIGN SIGHT「ゴミうんち展」会場より 狩野佑真《Rust Harvest │ 錆の収穫》
    狩野佑真《Rust Harvest │ 錆の収穫》


    井原宏蕗の作品の素材は、なんと動物の糞。井原は身近にいる動物の生きる痕跡に興味を持ち、糞そのもので動物の形をつくっています。

    糞を乾燥させて、漆で固めて素材として利用。生命活動そのものを形にした作品ともいえます。


    21_21 DESIGN SIGHT「ゴミうんち展」会場より 井原宏蕗《cycling -do on key-》
    井原宏蕗《cycling -do on key-》


    苔は樹木や岩だけでなく、コンクリートにも生えるという特性をもち、いわば自然と人工を行き来する存在といえます。

    通常、展覧会の会場には生の植物は持ち込めません。会場の各所にある苔のインスタレーション作品は、人工的につくられた境界をあいまいにしていきます。


    21_21 DESIGN SIGHT「ゴミうんち展」会場より 吉本天地《気配 ― 覆い》
    吉本天地《気配 ― 覆い》


    通常、展覧会を行う際には間仕切りになるパネルを使いますが、今回はそのパネルを展示台としても利用。ここでも、ゴミと、そうでないものの境界を考えさせられます。

    環境問題や循環型社会について語ると、堅苦しくて野暮ったい表現になりがちですが、いかにも21_21 DESIGN SIGHTらしいスマートな切り口。気軽に見ていただきたい展覧会です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2024年9月26日 ]

    竹村眞一《めぐる環》
    中山晃子《Alive-Painting》
    STUDIO-SWINE の作品
    山野英之《クソバッジ》
    Alternative-Machine《Hyperself》
    マイク・ケリー《Life-Cycles》
    veig(片野晃輔、西尾耀輔)《漏庭》
    21_21 DESIGN SIGHT「ゴミうんち展」会場風景
    会場
    21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
    会期
    2024年9月27日(金)〜2025年2月16日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00 - 19:00(入場は18:30まで)
    休館日
    火曜日(2月11日は開館)、年末年始(12月27日 - 1月3日)
    住所
    〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
    電話 03-3475-2121
    公式サイト https://www.2121designsight.jp/program/pooploop/
    展覧会詳細 「企画展「ゴミうんち展」」 詳細情報
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