京都の細見美術館で、「石本藤雄展 マリメッコの花から陶の実へ ―琳派との対話―」が開催されています。
現在は陶芸家として活動している石本藤雄さん。
フィンランドのブランド「マリメッコ」で、30年余りテキスタイルデザイナーとして活躍されていました。
マリメッコでデザインした布が、美術館の吹き抜けにも飾られています。
この展覧会のユニークなところは、石本さんの作品と、展示会場の所蔵作品とを取り合わせて展示し、作品どうしの “対話” をテーマにしていること。
細見美術館は、俵屋宗達や尾形光琳など、琳派(りんぱ)とよばれる流派のコレクションで知られます。
石本さんの作品と琳派の出会い。さて、どのような対話なのでしょう。
展示室に入ると、たくさんの円筒状の布が目に入ります。
どれも石本さんがマリメッコでデザインしていた頃のもの(1970年代~2000年代)。
左の掛け軸は、中村芳中(なかむら ほうちゅう)による作品 《朝顔図》。
何の違和感もなく、一つの空間に溶け合っています。
(左)本阿弥光悦・書 俵屋宗達・下絵 《月梅下絵和歌書扇面》 江戸前期 細見美術館蔵 (右)コレクション「シュダンタルヴィ(Sydäntalvi 真冬)」より 石本藤雄 《ウオマ》(Uoma / 河床)
ぴったりと息の合った取り合わせ。
左は、俵屋宗達の下絵による扇面。右側の墨流しのパターンを使った布は、石本さんの1980年代のデザインです。
今回の展示では、琳派の作品選びや、会場の展示構成も石本さんが手がけています。
次の展示室では、陶芸の作品が加わります。
(上)鈴木其一 《水辺家鴨図屏風》 江戸後期 細見美術館蔵 (下)石本藤雄 《冬瓜》
アヒルと冬瓜(トウガン)の組み合わせ。
丸っこい姿が呼応し合っています。
石本さんは、ギャラリートークで「展示室に入った所から見ると、白いアヒルが白いトウガンをつついているように見えるんですよ」と、うれしそうに話されていました。
石本さんは、砥部(とべ)焼という焼き物の町、愛媛県砥部町の出身。
後ろに見えるのは、故郷のオオイヌノフグリをモチーフにした陶板です。
愛媛といえば、みかんです。
石本藤雄 《みかん》
何ともおおらか。南国愛媛の香りがします。
屏風の後ろはガーデンパーティ。琳派とともに咲き乱れています。
(左)池田孤邨 《四季草花流水図屏風》 江戸後期 細見美術館蔵 (右)石本藤雄 《ブウタルハクツト》(Puutarhakutsut / ガーデンパーティ)
自分のデザインしたものを琳派との対話という形で並べることで、琳派の草花との共通点を改めて感じた、と話されていました。
デザインのアイディアスケッチも展示されています。
布の柄は同じパターンを繰り返してつくられるため、繰り返すことで面白くなる(単調にならない)デザインにすることが大切なのだそうです。
(上)中村芳中 《立葵図扇面》 江戸後期 細見美術館蔵 (下)石本藤雄《紅白花》
「どちらが石本で、どちらが琳派か」と思うような組み合わせ。
上は、中村芳中によるタチアオイ。下が石本さんの作品《紅白花》です。
「この(中村芳中の)作品は知らなかったけど、見つけて『あれっ』と思って並べた」のだとか。
今回の展示を通じて、藝大時代に出会った俵屋宗達が自分のベースとなっていると感じた、という石本さん。
琳派の作品としっくりとなじんでいるのは、偶然ではないのかもしれません。
そのおおらかな世界と琳派の草花や動物との出会いは、友だちとの再会の場面のよう。
打ち解けておしゃべりをしているような、言葉がなくてもわかりあっているような。
ほのぼの、幸せな気持ちになる展覧会です。
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tomokoy
京阪神を中心に、気になる展示をぷらぷら見に出かけています。
「こんな見方も有りか」という感じでご覧いただければと思います。
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