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レポート
宮島達男 クロニクル 1995−2020
千葉市美術館 | 千葉県
世界的に評価が高い、LEDのデジタル・カウンターで知られる現代美術作家
首都圏の美術館では12年ぶりに開催される大規模展
1995年を起点に「クロニクル(年代記)」がテーマ、作品表現の本質に迫る

LEDのデジタル・カウンターを用いた作品で知られる現代美術家、宮島達男(1957-)。これまでに30ヵ国250ヶ所以上で作品を発表しており、独自の作品世界は大きな注目を集めています。

本展では、宮島の創作にとって重要な転換期といえる1995年を起点に現在まで、「クロニクル(年代記)」というテーマで制作の歩みを辿っていきます。

企画展会場に上がる前に、1階のさや堂ホールから。《Floating Time》は床にデジタル数字が投影される作品です。鑑賞者は数字が漂う空間を、自由に歩き回ることができます。


《Floating Time》2000年
《Floating Time》2000年


企画展示室の冒頭は《Counter Skin on Faces》。3人の女性の顔に色が塗られ、顔の上の数字がカウントダウンしていきます。

赤・黒・白の三色は、宗教や人種の差異と、それを乗り越える他者との共存を示唆しています。


《Counter Skin on Faces》2019/2020年
《Counter Skin on Faces》2019/2020年


続いて「Counter Voice」シリーズ。9から1までの数字を叫び、0の時に水面に顔を沈めるパフォーマンスで、いずれも日本初公開です。

《Counter Voice in Wine》はイギリス、スペイン、フランスの3者が、異なる言語でカウントダウンした後に、顔をワインの容器に。《Counter Voice in Chinese Ink》は宮島達夫自身が、墨の中に顔を沈めます。

デジタル数字の作品からストイックな作家というイメージを持っていましたが、黒塗りの宮島が息も絶え絶えになるさまは、かなりユニークです。


《Counter Voice in Chinese Ink》2018/2020年
《Counter Voice in Chinese Ink》2018/2020年


《Deathclock for participation》は、観客参加型の作品です。参加者は、自分が死ぬ(と思う)日にちを入力。壁に大きく映し出された参加者の顔に、死ぬまでの秒数がカウントダウンされます。

死までの時間を直視させる恐ろしい作品のようにも見えますが、かけがえのない時間や生を意識して欲しいという思いが込められています。


《Deathclock for participation》2005-2018
《Deathclock for participation》2005-2018


樹木医・海老沼正幸の活動に呼応して、被爆した柿の木2世の苗木を世界各地に植樹する「時の蘇生・柿の木プロジェクト」を行っている宮島。本展ではその活動について、インタビューや参加者のコメントなども紹介されています。

《ブロンズで型取りされた被爆柿の木2世》は、1998年に国連本部で展示された作品です。柿の木は原子爆弾の形にも見え、平和と戦争など、複数のイメージが重ねられています。


《ブロンズで型取りされた被爆柿の木2世》1998年
《ブロンズで型取りされた被爆柿の木2世》1998年


《Changing Time/Changing Art》は、展示室の一部屋すべてを使った作品です。展示ケースがミラーシートで覆われ、切り抜かれた数字の形から、ケース内の作品を覗く事ができます。

ケース内の5者(河原温、中西夏之、菅井汲、李禹煥、杉本博司)の作品は、千葉市美術館のコレクション。作品のセレクトは宮島が行っています。

宮島と千葉市美術館のコラボレーションは、まさにここでしか見る事ができない作品です。


《Changing Time/Changing Art》2020年
《Changing Time/Changing Art》2020年


《Zero fire money》は1ドル紙幣が燃やされ、隙間に2つの数字が生まれている作品。宮島は1990年代前半に、「燃やす」「塗る」など消去にまつわる制作を行っています。

この他にも、国内では見る機会が少なかったドローイング作品も展示されています。


(左から)《Over Econimy-Death Money》1993年 / 《Zero fire money》1994年
(左から)《Over Econimy-Death Money》1993年 / 《Zero fire money》1994年


続く大きな展示室は撮影可能です。数字が変化するデジタルカウンターとはいえ、観客が動画も撮影できるのは珍しい試みです。

《Life(le corps sans organes)- no.18》は、カウンターのユニット(ガジェット)がゆるやかに繋がった作品。人工生命の研究で第一人者である池上高志教授が協力し、ガジェットの関係性でプログラム自体が変化して、予測不能な反応が連作していきます。

《Innumerable Life / buddha MMD-03》は、2500個ものLEDを用いた作品。法華経の「地涌の菩薩」(地面の下から出現する菩薩で、現世の人々全てに仏性=仏になりうる性質が備わっている事を意味する)が、イメージの元になっています。

鏡が複雑に組み合わさり、光が乱反射する《Diamond in You No.17》。各面の中央にLEDが設置されています。「仏の智恵」を意味する「金剛智」をモチーフにした作品です。


《Life(le corps sans organes)- no.18》2013年
《Life(le corps sans organes)- no.18》2013年

《Innumerable Life / buddha MMD-03》2019年
《Innumerable Life / buddha MMD-03》2019年

《Diamond in You No.17》2010年
《Diamond in You No.17》2010年


《HITEN-no.11》は、本展で世界初公開された作品です。弧を描くように壁にランダムに配されたLEDは、パステルカラーの光を放ちます。敦煌の仏教遺跡でみた宗教画がモチーフになっています。


《HITEN-no.11》2020年
《HITEN-no.11》2020年


そして、《地の天》。1996年の千葉市美術館・開館記念展「Tranquility―静謐」に出品された作品です。

宇宙をイメージした円形の空間に、青色LEDによるデジタル・カウンターが、暗闇に浮かぶように点灯。当時、青色LEDは実用化されて間もない頃という事もあり、光はあまり強くありませんが、儚げに見える光が世界観を支えているように感じられます。

これまでにも何度か展示されていますが、ゆっくりと時間をかけて見たくなる詩情豊かな作品。千葉市美術館としても、非常に人気が高い作品のひとつです。


《地の天》1996年
《地の天》1996年


2000年代から「Art in You」を提唱している宮島。「アートはあなたの中にある」と訳され、誰もが創造性を生み出せるとする宮島の思想は、まるでコロナによる閉塞感を打破するためのメッセージのようにも受け取れます。


展覧会は千葉市美術館の開館25周年記念として企画されました。首都圏の美術館では12年ぶりとなる大規模展をお楽しみください。


[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年9月23日 ]

会場
千葉市美術館
会期
2020年9月19日(Sa)〜12月13日(Su)
会期終了
開館時間
午前10時-午後6時 (入場は午後5時30分まで)
金曜日・土曜日は午後8時まで (入場は午後7時30分まで)
休館日
10月5日(月)、11月2日(月)、12月7日(月)、(10月19日、11月16日は展覧会休室)
住所
〒260-0013 千葉県千葉市中央区中央3-10-8
電話 043-221-2311
公式サイト https://www.ccma-net.jp/
料金
般1,200円(960円)大学生700円(560円)小・中学生、高校生無料
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
※()内は前売り、市内在住の65歳以上の方の料金
※前売券は千葉市美術館ミュージアムショップ(9月18日まで)、ローソンチケット(Lコード:31988)、セブンイレブン(セブンチケット)、千葉都市モノレール「千葉みなと駅」「千葉駅」「都賀駅」「千城台駅」の窓口にて9月18日まで販売(9月19日以降は当日券販売)
※本展チケットで、5階常設展示室「千葉市美術館コレクション名品選2020」もご覧いただけます。
ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18:00以降は観覧料半額
10月18日(日)は市民の日につき観覧無料
展覧会詳細 宮島達男 クロニクル 1995−2020 詳細情報
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