第一線の染色作家として新しい表現に挑み続ける八幡はるみ(1956年生まれ)の個展を開催し ます。
八幡は京都市立芸術大学で染色を学び、大学院在籍中から個展やグループ展で精力的に作品の 発表を始めます。動植物のスケッチから模様を生み出す日本の伝統的な染色のあり方を踏まえつ つ、生地の柔軟性を生かして与えた形態から染模様を導き出す「シェイプド・ダイ」に先駆的に取り 組み、コンピュータによる画像加工やインクジェットプリントなど新しい技術を果敢に取り入れ、華や かで独創的な作品世界をかたちづくってきました。
花や植物が埋め尽くす色彩豊かな大画面の背後には、「染とは何か」という本質的な問いが隠さ れています。素材、技法、工芸と美術の関係などについて、八幡は思想的な格闘を続けてきました。作 家個人の内面を吐露するのでなく、宇宙を言祝ぐかのような生命感にあふれた作風は、現在の到達 点といえます。
多彩な技法やメディアを駆使して染を広義にとらえ直す仕事は高く評価され、2013年に大 原美術館工芸・東洋館で個展を開催、19年には第32回京都美術文化賞を受賞しました。衣類や小 物などプロダクトのデザインも手掛けるほか、京都芸術大学教授として後進の指導にもあたってい ます。
今展は八幡が1992年の第2回から連続22回の出品を続ける「染・清流展」ゆかりの会場で、 創作の軌跡をたどります。さまざまな模様がコラージュ的に画面を彩る 90年代の作品や、色が横溢し花のむせるような匂いまで感じさせる2000年代の大作、曼荼羅をも思わせる近年の組作品 など、変幻する八幡の創作をお楽しみください。
90年代から最新作までの目を引くエキゾチックなデザインの作品たちがずらり。
アロハシャツやトートバッグなど、実用性のあるものを手掛けていることも注目です。