ヒコーキが飛んだ　田島憲治展

　 簡素な作りでありながらも、風を受けてゆっくりと空を滑っていくゴム飛行機。その情景は、気持ちを和ませ、自由なる心持ちへと誘います。ゴム飛行機に遊び興じた少年の日の輝きを、鮮烈な色彩とフォルムによって描き出したのが田島憲治でした。 　 彼が短大入学頃から取り組んだのが、ゴム飛行機をテーマにした作品です。ゴム飛行機で遊ぶ少年たちの様子に触発されて、描き始めたと言われていますが、以後「ヒコーキ」と題した作品を次々と発表していきます。カラフルな翼をもったヒコーキが黒く太い線で描かれ、強い印象と深い味わいを見るものに与えます。 　 惜しくも50歳で急逝した田島は、本格的に美術の勉強を積んだわけでなく、家業のかたわらキャンパスに向かう日々を送り、「洋画家」と称するほどの経歴があるわけでもありません。かえってそれが、少年の姿に心動かされた感性をそのまま発熱させ続けたように思えます。